†薔薇色遊戯†
□Pierced Earrings
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暗がりの寝室。
「ッ…、ヤだ……ッん」
ぴちゃぴちゃと、やたら艶めかしい水音が聞こえる。
触れられているのは耳の上のほうだけなのに……ぞくぞくっ、と、背筋を何かが這い登った。
ピチャッ。
舌先は一度耳を離れ、首筋に降りる。動脈を探る吸血鬼みたいに、吸いつきながらなぞられた。いっそこのまま食べられてしまえたら、と思う。俺の体がバラバラに分解されて、邑輝とひとつになれる。
肩口まで舌を滑らせると、邑輝はまた首筋を昇り始めた。
「ん…ふぁ……っ」
涙目で睨みつけてやれば、クスリと笑みを洩らす。
微笑みは、濡れた耳には冷たかった。
「やッ…じらすな、よっ……」
言った途端、カチッと歯に挟まれる。
押さえられた肩が、びくっと跳ねた。
「痛ッ……ばッ、ア、っ……」
「クス……」
また、邑輝は笑う。
すっかり充血したアソコもココも、堅く勃ちあがっているというのに。
今日の邑輝は、なんだか変かも知れない。それはもしかしたらもしかしなくても、都筑自身のせいでもあったが。
それは、昨夜のこと。
「……消えちゃった」
情事のすぐ後。淋しげに呟く都筑の指が指した箇所で、今しがたつけられた濃い紫のキスマークが五秒と待たずに消えていった。
「またつける楽しみがあるじゃないですか」
邑輝はそう言って煙草を灰皿に置き、引き寄せた都筑の首筋に再び痕をつけ、……それがまた三秒ほどで消えていくのを見て、なんとも淋しく切ない気持ちを味わった。
「印が、欲しいですか……?」
つけたいのは、邑輝のほうだった。都筑が邑輝のモノだという刻印を、なめらかな肌に刻みたい。
返事を待たずに、ちょうど手元にあった煙草を押しつけた。
「アッ!!」
鋭い悲鳴を押さえつけ、じゅゎっと肉の焼けるにおいが広がる。
「急に何すんだよ!!」
怒った都筑が噛みつくように怒鳴ると。
「やっぱり……」
鎖骨のあたりに押しつけられた、火傷がスゥッと消えていく。邑輝は少し沈んだ顔でそれを見つめた。切ない。
「邑、輝……?」
こんな淋しげな邑輝を見れるのは、俺の他に一体何人居るのだろう……? いや、きっといない。
だから、都筑は言った。