小説1
□子供の日。
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気持ちのいい朝。
窓からは太陽の日差しが差し込み、清々しい空気があたりを包んでいる。
先に起きていた白銀は、昶を起こしていた。
「昶クン!朝ですよ〜」
当の昶は何の反応も示さない。
「まったく…。」
呆れたようにため息をついて、昶を起こしだす白銀。
「ほら、昶君 起きてください」
すると。
「…って え……?」
昶が寝ているハズの布団の中から出てきたのは…
ちょこん。
どう見ても五歳ぐらいにしか見えない…
昶、だった。
「昶君…なんですよね」
「………」
その昶(らしき子供)は、白銀をジッと見つめている。
「なまえ」
「へっっ?」
唐突に口を開かれるものだから、白銀は思わずマヌケな声を発してしまった。
「名前、なんて言うの」
「ワタシ、ですか?」
自分を指差して聞いてみると、昶はコクコクと頷いた。
もしかすると、過去の昶君と現在の昶君が入れ替わってしまったのでは。白銀はそう考えた。それなら昶君が五歳の時はワタシの事を知らないのだから、名前を聞くのも説明がつく…かもしれない。
「ワタシは白銀といいます。」
「しろ が、ね?」
「ハイ。し・ろ・が・ね。」
「しろがね!」
白銀の名前を覚えると、昶の顔は嬉しそうにほころんだ。
あ、昶クン…。
白銀はごくっと生唾を飲み込んだ。
(カワイすぎる… ある意味殺人兵器ですよ、コレは)
どうやら昶の無邪気な笑顔にやられたようだ。
(どうしよう、コレは…)
白銀は限界がきていた。
(昶クンと…キスがしたい…)
「……。」
「ねえ しろがね!」
「な、なんですか?」
「おれね、しろがねとちゅーしたい!」
「ハァァッッ!?」
思い切り叫んでしまった白銀。
「おれ聞いたことあるんだ。きすは好きな人とするモノだって!」
落ち着け。自分。
今ここにいるのは幼い純粋な、何よりもまだ子供の昶クンだ。汚すワケには…
「しろがねっ、おれとちゅーイヤなの?」
あ… 手遅れ、ですね。
白銀はゆっくりと昶を床に寝かせて、触れるだけのキスをした。
「白銀… もっと、して」
「……!」
白銀もその一言で、自分を制御できなくなっていた。
二人は舌を絡める激しい口づけを何度も、何度も繰り返した。
「んっ… ふ、し…ろ、 あっ」
「んっ…」
何度も何度も唇を重ねて、愛を確かめ合った。
ふと気がつくと、午前の6時だったはずの時計の針は、午後2時を指していた。
いつの間にか眠っていたようだ。
ベッドに目をやると、そこにはいつも通りの昶が座って、スヤスヤと寝息を立てていた。
その姿を、これまでこんなに愛しく思った事があっただろうか。
昶の前に立ち、髪に触れる。
「昶クン、あなたがどんな姿になったとしても 愛していますよ」
−end−