小説1
□紅
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「クスクス」
その白い腕には、幾筋もの真っ赤な線。
右手には折りたたみナイフ。
彼は、笑っていた
「…士郎…?」
アツヤが見た光景は、血にまみれた紅い兄だった。
「っ、おい!!」
アツヤは士郎に駆け寄った。
「何してんだよ!?」
肩を掴んで叫ぶと、士郎はゆっくりとこちらに向き直った。
「あつや?」
その顔には…
笑み。
「……っ!?」
「あぁ、あつやだぁ。」
そう言うと士郎はふわりとアツヤに抱きついた。
彼の腕から流れる血が、アツヤのユニフォームに付着する。
士郎に抱きつかれて、アツヤは困惑する。
その時、
ぷつ。
「………?」
(何の 音だ)
アツヤは音のした方を振り返る。
音の根源は…士郎だった。
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