小説1

□紅
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アツヤの背中にまわされた腕からは、新たに出来た傷から血が溢れていた。





士郎はナイフを左腕に深く突き立てていたのだ。



「やめろ…」

「ふふ」


腕に刺さったナイフが肌を滑り、傷を広げていく。

白い肌は次第に紅く染まっていった。





「やめろよ… 何やってんだよ!?」
「ねぇあつや、綺麗でしょう?」
「!? 何言って…」


「こんなに綺麗な色、僕初めて…。」



士郎はうっとりしながら言った。








壊れていく


士郎が 狂っていく








(だめだ やめろやめろよ…)





アツヤはぎゅっと目を瞑って叫び出しそうになるのをこらえた。









(…俺の せいだ)



俺のせいで、士郎は…








(俺が 俺が俺が俺が…!!)









じわ













「………?」


アツヤは胸元が濡れたような感覚があり、目を開いた。

顔を下ろした先は士郎のうつむいた頭だった。









「し、ろ………?」



士郎は涙を流していた。







「ごめ…な さい ごめんなさいごめんなさい」


泣きながらひたすら謝る彼を見て、アツヤは心が痛んだ。





(なんでお前が謝るんだよ…)





いっそ俺を壊してくれたらいいのに



そうしてくれればどれだけ楽か













謝り疲れたのか、傷のせいか

士郎は気を失った。











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