...小説

□『君と一緒なら』 1〜8話(未完)
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【第1話】

「おーい?妃菜ー置いてくぞー!」

「ちょっと待ってよ、蓮ー…」

静かな朝はいつもこの2人のやりとりによって賑やかになる

「あら、またあの2人は仲がいいわねー」

「殆ど毎日あんな感じよね」

近所の人達は皆、慣れているようだ

それもそのはずこの2人、妃菜と蓮は生まれた時から一緒だった

同じ病院で同じ日に生まれた

しかし時間は違く、蓮の方が早かった

それに双子では無い

親同士が仲がよく兄妹のように育ってきた

家も隣同士で幼稚園から今まで一緒に登校している

「ごめん蓮!、やっと準備出来たー!」

「全く…何分待たせるんだよ?」

「えっと…5分くらい?」

「馬鹿。もう20分も待ってんだよ」

「ご、ごめんなさいー!」

「…もういいから行くぞ?このままじゃ遅刻する」

「うんっ!」

「じゃ、乗れ」

「分かった!いつもありがとう」

もう慣れたように妃菜は蓮の自転車の後ろに乗った

中学の頃からこんな通学をしている

蓮は勢いよくペダルをこぎ出した

「しっかり掴まってろよ?」

「うん!…はぁ〜やっぱり秋の自転車通学は寒いねー」

「そうか?」

「うん、風が少し冷たいし。でも…」

「紅葉が綺麗だから悪くもない?」

「え?えええっ!何で私が言いたいこと分かったの!?」

「何年一緒だと思ってるんだよ。妃菜が考えてることくらい分かるし」

「すごいねー!」

「まあな。あっ、……よっと」

蓮は片手を離し何かを取るような仕草をした

妃菜は不思議そうに蓮の様子を見ていた

「ほら、これやる」

「え?」

蓮は前を向いたまま妃菜にさっき取った物を渡した

「これは…紅葉??」

「おう。さっき風で飛んできたから取った」

「…ありがとう。綺麗だね〜」

妃菜は嬉しそうに色んな角度から紅葉を見ていた

「それに夢中になって落ちるなよ?」

「なっ、そこまでドジじゃないもん!」

「どうかな〜?」

「蓮はいつもそうなんだからっ!」

「ちょ、暴れるなよ…」

「もう降りるー!」

「遅刻するぞ?」

「うっ…」

「はは」

妃菜は諦めたように大人しくなりそれを見て蓮は歯を噛みしめて笑っている

2人はいつもこんな感じだ

蓮に不満を言っていた妃菜だが手の中の紅葉を嬉しそうに見て
蓮の背中に「ありがとう」と書いた

「ん?どうかしたか?」

「なんでもなーい!」

「そう?ってあと5分で遅刻だ!!」

「え!?蓮急いでよー!」

「分かってるって!落ちるなよ!」

蓮は立ってこぎ出した

この2人に静かな時間は来ないだろう
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