君の心臓になりたい

□生意気さすら懐かしい
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「ふぁあ〜あぁ……」

…ねむい、正直ねむい。
ここに到着して数時間。初めこそ緊張していたものの待ち時間にくたびれた私は睡魔に襲われていた。

ほんの数時間前まではイルミさんだったはずの彼は、今ではすっかりギタラクルと化している。
隣に座り込み、精一杯話しかけてみてもカタカタとしか言わない。…いや、言えないのかな?


あぁ、暇だなぁ。だけどみんな殺気立っていて、とてもじゃないけれど話かけられる雰囲気じゃない。
眠くなるのも仕方ないよね、そう思いつ瞼が閉じようとした瞬間、私のボヤけた視界に見慣れた猫毛の頭がうつった。

あれは、間違いない―…!

「キルア君!!」

言うが早いか、私はすぐさま彼にかけよった。


「ん?げっ、棗じゃん!」
「げ、ってなにその反応!!」


数週間前となんら変わりない様子のキルア君。この生意気さすらも懐かしい!


「いやだってさ、何で棗が此処にいんだよ?てゆうか、よく辿り着けたな〜」

本人に悪気は無いのだろうけど、小馬鹿にしたような態度と言葉がグサリとくる。
しかしこの際年上の余裕と再会した感動に免じて許そう!


「何って、キルア君を探しに来たんだよ!突然出て行っちゃうから…」
「はっはーん、さてはオレがいなくてさびしかったんだろ?」


猫みたいな、いかにもイタズラっ子の表情でニヤニヤするキルア君。
その通りですよ全く!!

「当たり前でしょ、もう二度と会えないかとも思ったんだからね!…心配したんだよ」
「!………わりぃ、」


まさか素直に即答されるとは予想外だったらしく、急にしおらしくなってしまった。
でも本当のことだ。キキョウさん達だって同じだと思う。ただ少し強引すぎるのと、やり方がズレているだけだと思うの。
私はそう信じてる。


「ね、そろそろ帰って来てよ。キキョウさん達だって心配してるよ。」

私の口からキキョウさんの名前が出た途端、しおらしかった態度は一変して、いつものキルア君に戻ってしまった。


「はぁ?!絶、対、やだ。あんな家に戻るなんてまっぴらゴメンだね。」

フン、とそっぽを向いてしまった。確かに気持ちはわからなくも無いけど、でも…


「キルア君がどう考えてるのか本当のところは分からないけど…一度ちゃんと話し合った方が良いよ。きっと誰か1人は分かってくれる!そしたら他の人を説得してくれるかもしれないし…」
「えぇっ、だりぃよそんなの!んじゃあ棗が説得してくれれば良いだろー」

「え゛っ!!!」


さ、流石キルア君!痛いところを突いてくる。そうしてあげたい気持ちもあるけれど、あたしは良くして下さってるキキョウさんやシルバさん、ゼノさん達には頭が上がらないのだ。






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