君の心臓になりたい

□まだまだこれから。
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“二次試験会場まで私についてくること、これが一次試験でございます”

そう言われて走り始めてから、早くも2時間は過ぎたように感じる。
私だって戦闘力に欠けるとは言っても、一応一般人よりかは体力だって備えているつもりだ。なんとかイルミさんと並び、中の下ぐらいの位置をキープしている。


「そう言えば。さっきキルと何話してたの?」
「えっ」

並んで走り始めてから数時間たった今、初めてイルミさんが言葉を発した。
どうやらさっきはキルア君がいたから話すのを避けていた様だ。…やっぱりギタラクルから発せられたイルミさんの声に違和感を感じてしまう。


「えっと…私が最終試験まで残れてたら考えても良い、って言われました。」
「……ふぅん、流石にキルは痛い所ついてくるね。」


…それは暗に、私には無理だと言いたいのだろうか。


「イルミさんて、何気に酷いことさらっと言いますよね。」
「そうかな、オレ今何か酷いこと言ったっけ?」

…どうやら無自覚と言うか、本人に悪気は無いらしい。

「…なんて言うか、イルミさんて意外と天然ですね。」
「天然?…そんなの初めて言われけど。君ってよく分からないこと言うよね。」


オレって天然なのかな、と真剣に考えているイルミさん。私としては、そう言うところが天然なんだと思うのだけど。


ふと、私がゾルディック家に来たばかりの頃を思い出した。あの頃は何もかも初めてで怖かったなぁ。
特にイルミさんは無表情で何を考えてるのやらさっぱり検討がつかないし、それでいて毒舌な上になんとも高圧的な雰囲気がより一層近寄りがたかった。

今でこそなんとなく気分の違いぐらいは分かるものの、相変わらず本心が読めない時がある。
言葉では言い表しにくいけれど、どことなく影があると言うか、ふとした表情が誰も寄せ付けない雰囲気を醸し出している。

だけど、それが逆に私を気にさせててしまう。おこがましくも、何か力になれないだろうかと考えてしまうのだ。




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