君の心臓になりたい
□背に腹は代えられない
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「ん、」
ふと違和感を感じて振り返ると、さっきまでそこにいたはずの棗の姿が見あたらない。急に無口になったな、とは思っていたけれど、まさかはぐれたとは思わなかった。
「うーん。俺としたことが気配が消えたのに気づけないなんて迂闊だったかな。」
…と思ったけれど、よくよく考えてみれば、はぐれたのは俺にとっては何の損もない。むしろ足を引っ張られなくて済むわけだし好都合だ。
「て言うか棗のことだから、はぐれたことにすら気付いてないってこともあり得るかも。なんか頼りないと言うかぬけてるし。」
どうしようか、別に俺が探してやる義務もないし面倒なことはしたくないんだよね。
そう思って走り続けたけれど、さっきまで隣にいたものが急になくなった違和感は依然消えない。
今頃ようやく気がついて焦ってる頃かもしれない。なんか棗って従順な犬って感じだし、想像すると助けてやろうかなって気もしてきた。うん、一応探してあげようかな。
「うーん、俺って長男だからついついほっとけなくて世話焼いちゃうんだよね。」
一応4人もの弟を持つお兄ちゃんだからね。俺としては面倒見が良い性格だと自負しているんだけど、なぜか周りからは全く評されたことはない。
とにかく、先頭集団からはぐれるわけにもいかないし、とりあえずヒソカにでも電話してみようかな。アイツに頼みごとをするのもしゃくだけど、見かけたらついでに連れくるように言おう。