君の心臓になりたい

□終わりを告げる日常
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「棗さん、ちょっと棗さぁん!!早く来てちょうだい〜」
「は、はいただいま!」


私の1日は、いつもキキョウさんの悲鳴のような呼び声で始まる。


「あぁ忙しい!聞いてちょうだい、ミルキがまだ起きてこないのよ。まったくあの子ときたら!」
「またですか…私、起こしてきますね。」
「いえ私が行くわ!だから私の代わりに朝ごはんを作ってて欲しいのよ、よろしくね!」


返事をする暇もなく、キキョウさんは口早に言うと、嵐のごとくミルキさんの部屋へと向かって行った。



「……よし!」

私はキキョウさんに頼まれた通り、朝ごはんを作ることにした。

こんなことをしてるけど、私の本業はゾルディック家の医療係。だけどゾルディック家の人々がケガをすることなんてほとんどない訳で。
気付けば家政婦、悪く言えば雑用係と化していた。


「えーと、卵とベーコンと…」


パンをトースターにセットし、フライパンに卵とベーコンをほうりこむ。
いつもなら7人分の朝食を用意するところだけど、今はキルア君がいないから6人分だけで良い。

キルア君は理由はわからないけれど、数日前に家を出ていってしまった。それもキキョウさんとミルキさんを刺して。
まぁ私としては久しぶりの仕事だった訳だけど…

ゾルディック家の中でもキルア君が1番私に親しくしてくれてる。だからちょっぴりさみしい。


私がベーコンをひっくりかえそうと格闘していると、後ろから声をかけられた。


「ワシのは少々焦がしめに焼いとくれ。あぁ、目玉焼きは半熟がいいのう。」


ふりかえると、そこにはゼノさんが立っていた。

「ゼ、ゼノさん!おはようございます!」
「おはよう。今日も頑張っとるの。」


ゼノさんもキルア君の次ぐらいに良くしてくれてる。
そもそも、私の今の生活があるのはゼノさんのおかげと言っても過言じゃない。


「はい!もうちょっとで出来るので座って待ってて下さい。」
「おう。」


私の父は私が幼い頃に死に、母が1人で育ててくれた。
とうやら母もこのゾルディック家の医療係として働いていたらしい。そこでゼノさんの命を救ったとかなんとか…
そんな母も2年前に亡くなり、私は途方に暮れていた。
そんな時、命の恩人の娘を死なせる訳にいかん、と言ってゼノさんがここに置いてくださった。

そして今は、ただで置いてもらう訳にもいかないと思い、医療係(雑用係)として働いている訳だ。





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