君の心臓になりたい
□欺くにはミカタから!
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「あの…イルミさん、」
「どうしたの?」
「いや、あの、そのカッコ……どうしたんですか?いやむしろイルミさん、ですよね?」
ほんの数分前まではいつもの様にサラサラの黒髪にぱっちりおめめの美青年、つまりはイルミさんと並んで歩いていた私。
ところが今私の横にいるのは、カタカタと不気味な音をたてるあやしげな人物(怪物?)。
「うん、オレだけど。」
「いやでも心無しか別人のように見えるんですが…」
「……一応変装してるつもりだったんだけど。」
くるりとこっちに顔を向けるイルミさん。そこにイルミさんの面影は無く、むしろ恐怖さえ感じた。
「で、ですよね!もうバッチリですよ、私でも誰かわからなかったですから!!」
「……そう?じゃあもしキルがいても大丈夫だね。ちなみにオレは今からギタラクルだから。」
「……はい?」
「だから、今からオレのことはギタラクルって呼んでね。」
カタカタと笑うイルミさん…じゃないギタラクルさん。
確かに、いくらキルア君が私になついてくれてても、イルミさんが隣にいたんじゃ戻ってきづらいかもしれない。
イルミさんも考えてくれてるんだなぁ…まぁ他の理由もあるのかもしれないけれど。
て言うか、こんなにもイルミさんが素性を隠してるのに、私は素でいいのかな。
「あ!あの、私はこのままで良いんでしょうか?」
「いいんじゃない?オレは君の知り合いってことにしといてよ。」
ま、まじですか…
私にこんな危なげな知り合いいないよ!バレないかな、大丈夫だよね…?
「わ、わかりました。じゃああたしの師匠ってことでお願いします!」
「………」
私の設定が気に食わなかったのか、イルミさん、つまりはギタラクルさんはカタカタと音をたてながら私を見た。
と、その時ピルルルル!!と携帯音が鳴り響いた。どうやらイルミさんのらしい。
「もしもし。あ、なんだヒソカか。うん、オレもいまツバシ町にいるんだ。ステーキ定食を弱火でじっくりだね。わかった、ありがとう。」
なにやら私にはまったく分からない謎の会話がくりひろげられた後、イルミさんはプツリと電話を切った。
「誰からですか?」
「変態。多分あとで会えるよ。」
「え、……」
へ、変態って…
ことも無さげにさらっと言ってのけるイルミさん。しかもあとでその変態とやらに会わなきゃいけないのか……うん、心の準備をしておこう。