飛べない天使
□第0話::プロローグ
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時計の針がカチッと音をたてて、0時丁度をさした。
「ハッピーバースデー、あたし。」
今日はあたしの誕生日。そして今日は区切りの日でもある。
100歳になった今日、あたしは生まれた家を捨てて生まれた町も出ていく。
「おばあちゃん、行ってくるね…」
にこやかに微笑む祖母の写真。それをそっと伏せ、まとめた荷物を持って家を出た。
もうこの家に戻ってくることはきっとない。と言うより戻ってきてはいけない。
あたしは自分の覚悟が揺らいだ時のために、小さなマッチで静かに家に火をつけた。
ごうごうと燃え上がる家。元々そんな立派な家なだった訳でもなかったし、あっと言う間にくずれ落ちてしまった。
「これで良いんだよね…」
なんだかあたしはとんでも無い事をしてるのかもしれない。
今更そんな気がしてきた。だけどもう後には退けない。
あたしには、やるべきことがあるんだから。
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