飛べない天使
□第5話::もう1つの敵
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「き、来た…!」
杏は震える手を握りしめ、クラピカと同じように武器をかまえる。
しかし筋肉質の男は、
「オレが合図したらバラバラに逃げるんだ。今のオレ達に勝ち目はないだろう…悔しいだろうが今は……ここは退くんだ!!」
と杏達に告げた。
確かにこの男の言う通りだ。杏が恐怖で震えているのも事実、今はこの男の言う通りにするのが正しいだろう。
1歩ずつゆっくりと、しかし確実にヒソカが近付いてくる。
「今だ!!!」
男の合図と同時に、4人はバラバラに走りだした。
「なるほど、好判断だ。ごほうびに10秒待ってやるよ。」
なんだか嬉しそうに見えるヒソカ。そして余裕たっぷりに秒読みを始めた。
「いーち、に――……」
ヒソカの秒読みを背に走り出した皆の姿はもうほとんど見えない。
『皆どこへ逃げたんだろ…とにかく、あいつから離れなきゃ……!』
そんな思いを抱きながら杏は必死だった。
あんな生々しい殺しを見たのは今が初めて。
その事がさらに杏を追い詰め、あせらせていた…
「……いだっ、きゃあ!」
突然杏は悲鳴をあげてその場に倒れこんだ。
足がもつれ、転んでしまった様だった。
「あれ、こけちゃったね。」
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