小説
□沈む紅
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※クリスマス直前の柳生イベント(?)
ネットリとした暗闇が
視界の中の風景を全て包み込んでしまった
何も、視えない──
そう思った刹那、
腹部に感じた衝撃の様なものが僕自身を簡単に貫いたのが解った。
痛みを感じる暇もなく
僕は冷たい地面へと叩きつけられ、塗りつぶされた世界にひたすら目を凝らし、衝撃の原因を探そうとしたが
流れ出る鮮血が脳から思考力をゆるゆると奪ってゆき、探すのは困難だ。
「裏に潜みし陰の龍よ」
残念だったな、と
「や、ぎゅ・・う」
耳元で微かに聞こえたその声。
それは紛れもなくヤツの声で、その憎々しい表情が脳裏を過ぎった。
「皆、逃げ・・、て」
躰に力が入らない
意識が朦朧としていて
もうそれ以上僕は何も考えられなかった。
嗚呼
視界が
意識が
身体が───
何もかも途切れて、千切れて総て無くなってしまう。
(早くこの焦燥感を、)