小説

□硝子玉の罅
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※微妙にグロ注意









瞬きすらも遅く思えてしまう程の速さでそれは勢い良く僕に襲いかかった。
(それは主観的な話なので周りにはどう見えたか知らない)


その鋭い爪が学ランの布地を簡単に引き裂き、やがて剥き出しになった素肌に食い込んだ。
途端、紅い紅い僕の血液が溢れ出し、僕と彼を鮮やかに染めた。

えぐる様に僕の中身をかきだそうとする喩えようのない激痛に体中が声にならない悲鳴をあげる。

逃れようと何とか身体を捩ってみるがそれは全くの無意味で、力を失った両手がパタパタと情けなく彼の爪を僅かに叩くのみだ。


と、突然ぐいとそのまま身体が持ち上げられ
僕は腹に爪が突き刺さったまま宙ぶらりんの状態になってしまった。
重量によって更に食い込むそれ、脚を伝って流れ落ちる鮮血と口から吐き出される無様な吐血が乾いた土の地面に汚い水玉を作り上げる。


「かはっ───!」



ダラリと垂れ下がった頭と反転する視界。
手足もまるで人形の様に、作り物のように一緒に垂れ下がっている。


朧気な意識が今にも僕自身を手放してしまいそう、ゆっくりと自然に目蓋を閉じていく僕の世界から光は消えた。



「瑞希」



ねぇ




これは
誰の






「瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希瑞希っ!」





「───泣、かないでッ」



嗚呼そうか
思い出した
君は
君は



僕の大切で愛しい







『醍醐』





「醍醐、(ごめんなさい)」

「醍醐、(どうか許して)」



徐々に理性を帯びてきたその瞳が絶望に満たされるのを見て何か言葉を紡ごうと口を開いたが
弛緩した喉の筋肉が上手く動かせず、喉からはひゅうひゅうと空気が漏れる。




「醍醐、(君のせいじゃない)」








「────── 」




「醍醐、(一生、ずっと、これからも変わらずに君を愛しているから)」






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