小説

□紅色浪漫
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今自分の目の前に居る少女は華奢で、儚くて、柔らかそうな唇には紅が綺麗に塗られている。
真白い肌がさらに紅の鮮やかを主張していて、そこに座っているだけで何処か随分と蠱惑的だ。


団栗の様な瞳を正面から見てしまうのを何故か躊躇ってしまい、自分は畳ばかり眺めている。

何故自分は此処に居るのだろうか。
きっと今頃、己の顔は真っ赤になっているのだろう。


「あのぅ・・」

「雄慶、そろそろお前も若衆ではなく念者になりたいのではないか?」


自分から発せられた不安げな気持ちを汲み取ってくれたのだろう。
彼はそう言ってにこりと歯を剥くと、自分の目の前に居る少女に目線をやった。


───少女、


・・少、女?



違う。
これは
ここは陰間茶屋だ。

少女なんて居る訳がない
寺の者が少女を紹介する訳がない。


一瞬恥ずかしい気持ちが沸き起こったが直ぐにそれは消えた。
膝に置かれ、キツく握られた自分の拳の上に、少女の様な少年の手のひらがふわりと重なった。


「お床へ行きましょう」


変声期前の高い声。
洗練された仕草の一つ一つが自分の心臓を高鳴らせる。
きめ細かくて柔らかい肌が吸い付く様に密着してくる。

自分を此処に連れてきてくれた寺の者は、もう別の美しい少年に連れられて居なくなってしまった。



「さぁ・・」

何時の間にか敷かれてした如何にも安っぽくて薄い布団の上で、少年は緋色の着物をはだけさせた。

細くて白いその肩が、およそ自分と同じ性別とは思えない。
濡れた瞳がうっとりと自分を見つめる。
それは此処で躾をされた結果の商売道具なのだろうか、其れとも男を惑わす彼が持つ天性の才能なのだろうか。


そんな事は分からない
解ったところで、其れがどうしたと云うのだろう。


「お主、名は?」

「私ですか?私は───」



そして
そっと華奢な肩を掴んで
ゆっくりとゆっくりと彼を押し倒した。



---



──── 「あぁ、」


どうやら白昼夢を見ていた様だ。
ふと我に返り、辺りを見回すと直ぐ隣には何やら本を読んでいるらしい瑞生の姿。
目にかかる前髪を鬱陶しそうにかきあげている。


「お早う雄慶、」

「あ、あぁ、すまないボーっとしていた様だな」

「はは、珍しいね」


本から顔を上げずに目線だけを此方に向けながら瑞生は笑う。


それにしても──。
随分と懐かしい夢を見たものだ。
あれは確か七年か八年も前の話だったな。

確か名前は何と言っていただろうか。


記憶の中から情報を掬いだそうとしてみる。
けれど、よく思い出せない。
確か名前を聞いた時は
あの少年によく似合っているとそう思った筈だ。

「雄慶、またボーっとしてるぞ?」


「っ?!」


膝に置かれた拳に、瑞生の温かい手のひらが重なる。
顔を覗き込まれ、少し驚いてしまった。


「あぁ・・、」


年の割に意外と幼い顔付きをしている瑞生の瞳が、あの時の少年の面影と被る。

華奢な肢体が、
濡れた瞳が、
白い肌が、
全てが


あの少年と同じだ。
あの少年と似てる。


「瑞生、お前は」

「んー?」



あの時の少年とは違う、別物の色香が彼から漂っている。
これは大人特有の物だろう。


「──俺たちは、ずっと昔に会わなかったか?」

「むかしに?」


瑞生は読んでいた本をパタンと閉じて俺を見つめる。

そして一瞬だけ間をあけて、にこりと微笑んだ。
まるで朝露が蓮の葉から滑り落ち水面で弾けた様な快活な笑顔。

因みに表現が分かり難いという苦情は受け付けない。
俺だってそう思ってる


「昔に遭った事があるなら、それはきっと運命だよ」

今度は悪戯を企む悪童の様な笑み。
よく京悟と龍斗があんな風に笑っている。


「運命?」

「俺たちはきっとこうなる縁だったんだ」



そしてまた、彼の瞳があの時の少年と重なった。
きらきらと濡れて光る深い漆黒が────。




「あぁ、」


そうかもしれないな、と紅をさしていないその唇にそっと口付けを交わした。



----

意味不!←

とりあえず外法瑞生の仮設定だよ!


瑞生さんは幼い頃に男の子版遊郭で働いてたよ!という話でした。


そんで恐らくそこに遊びにきた龍斗と共に茶屋抜け出して旅にでるといry

駆け落ちの様な気がしてならんですハイ。


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