小説

□如月骨董品店にて
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一番はじめに瑞希の異変に気がついたのは京一だった。

「どうしたぁ?顔色が悪いぞ、みーちゃん」


身長の低い瑞希に合わせ、京一は体をかがめて顔を覗きこんだ。


「瑞希、大丈夫か?」


その姿を見て、傍にいた醍醐も声をかけた。
けれど2人の声かけに瑞希は応えない。


見れば顔色が異常に悪い ダラダラと大量に発汗もしている。


「体・・、熱い」


瑞希は苦しそうにそれだけ言うと、ぐったりと醍醐にもたれかかった。


「風邪ひいた?」


そんな瑞希の額にそっと手を伸ばしたのは颯波。瑞希の肌に手が触れると
「熱があるね」


と言った。
その顔は心配そうに歪められている。


「それならこの茶を飲んでみろ」


いつのまにやら台所から出てきた如月がちゃぶ台に湯のみを置いた。


中の液体からは怪しい臭いが漂っているが
この際キニシナイ事にしよう


「・・・なぁ、瑞希お前もしかして」


と、いつになく真剣な面もちで龍麻が発言した。シリアスな顔の龍麻はそうそう見れるものではない。

「女の子の日、か?」


そう言いながら龍麻は瑞希の制服を手際よく脱がし始めた。


「お、おい緋勇」


何故か焦って京一は制止しようとしたが、



突然にその動きがピタリと止まった。
否、その場にいた全員の動き(龍麻除く)が同時に停止した。


「やっぱりな」


そう言う龍麻の視線の先には、いつもの頼りなさそうな瑞希の胸板ではなく、女の子のそれ。



京一は間抜けな声をあげ醍醐は顔を真っ赤にして颯波はキョトンとしていて、如月は咄嗟に瑞希の体にタオルをかぶせた。実に性格の出る反応である。


「ひ、緋勇・・?こ、これは一体・・」


「瑞希の月に一回の恒例行事、って言っても2ヶ月くらい無かったけどな」


なぜか満足そうに言う龍麻に皆は困惑の表情を浮かべている。


「え、なんだよソレ」


京一はあまり良くない頭をフル回転させて考えたがまったく分からない様子で声を上げた。


「体質?」


が、龍麻は慣れきった様子で軽く答えながら瑞希の乱れた制服を元に戻している。


「翡翠、水くれ」


そして学ランの内ポケットから粉薬らしきモノを取り出すと、如月から水を受け取り
瑞希の口にその二つを流し入れた。

瑞希はおそらく無意識だろう。
顔を思い切りしかめ、咳き込んだ。
どうやらとても苦いらしい。


「ひー、さ・・」


紅潮させた頬に潤んだ瞳けれど先ほどまでの様な苦しそうな表情ではない和らいでいる。

薬が効いてきたのだろう

「ありがとう」

「おう、しばらく寝とけ」

クシャクシャと汗ばんだ瑞希の額を撫でた。
それと同時に瑞希の瞳も閉じられた。


「眠った、な」


醍醐は自分にもたれ掛かって寝ている瑞希を安心したように眺め
京一は勝手に引きずり出してきた如月のであろう布団を瑞希にかぶせた。

颯波もホッと一息ついて畳にへたり込んだ。

如月はどうやらお茶を入れ直したらしい。
台所から盆を持って出てきた。


「これで熱も下がるだろ」

龍麻はそのお茶を一気に飲み干し、乾いた声を漏らした。


「・・で、緋勇」

「あん?」

「瑞希の事だよ!」

「ああ、・・」


龍麻はしばし沈黙した。目を彷徨わせて
何か言葉を選んでいるようだった。


「体質だよ」

「だからって、じ、じょ、女子になるなんて!」

「落ち着け、そんでどもるな翡翠」

「僕は落ち着いている!」

「顔が赤いんだよ食べるぞこのやろー」

「ちょっと待て、何か論点ずれてる」


長々と続いた間抜けな会話にやっと京一の突っ込みが入った。

ぐっしょぶ京一
よくやった京一


「すごいねぇ、女の子にもなれるなんて」

だが颯波のさらに論点のずれた感想によって突っ込みは一掃されてしまった。


「いやいやいやいやそんな結論で納得しちゃうのか颯波!」


「お前ら静かにしろ、瑞希が起きるだろ」


醍醐の声。
皆は思い出したように瑞希のほうを見た。


「おっと、そうだった。悪いな瑞希」


京一は柔らかな笑みを浮かべた。
木刀をクルリと器用に回す。



「今日は皆で如月の家に泊まりだな」

「え?」

「いいじゃねぇか、たまには男だけでまったりしようぜ」

「・・まあ、構わないが、暴れるなよ」

「へいへい、よし緋勇!買い物いこーぜ買い物!」

「そうだな、腹減った」


心地良い騒がしさ。
醍醐と如月は目を合わせて笑いあった。


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話の論点ズレまくった
( ´∀`)


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