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…あんなに目の前で踊ってるのに…興味ないのかな?


 全く興味の無い様子の馬超の隣で、趙雲が声を掛ける。


「素晴らしいですね、馬超殿!」

「……あ…あぁ、そうだな。」

「ちゃんと見てます?」

「見てる見てる。」

「1人位…摘んでもいいかな…。」


 ポツリと呟く馬岱に気付かず、趙雲がまた舞姫達に視線を戻す。


「お前…昨日も部屋に女官連れ込んでただろ…」

「だってこの前名無しさんが相手してくれなかったし……僕、落ち込んでるんだよ?」

「…知るか。」


 舞姫達が美しく舞う中、馬超はまた酒を飲み始めた。


名無しさん、か……。この者達より…あの日見たあいつの方がよっぽど……。

いや、何を考えているんだ、俺は。


 馬超は一気に酒を煽った。


 数曲舞い終わると彼女達は一礼をした。


 嬉しそうに彼女達の元へと駆け寄った名無しさんは、特に奏者に夢中の様で話し込んでいた。


「おぉっ!名無しさん殿が気に入ってくれた様だな!」


 劉備が嬉しそうに顔を綻ばせる。


 笑顔で浮き浮きと話す名無しさんと奏者に、舞姫達も嬉しそうに混ざる。



「劉備様!」

「名無しさん、どうされた?」

「少し席を外しても宜しいでしょうか?」


 嬉しそうな笑顔で劉備の傍に駆け寄った名無しさんの姿に劉備は"どうぞ"とばかりに微笑み返した。


 一礼した後、舞姫達と席を後にした。


 奏者の楽器は、置かれたままに。



 ザワッ


 戻って来た名無しさんと舞姫と奏者。皆が騒ぎ、様子が違う。


「…名無しさん!?」


 劉備が慌てて口を開く。


「宴を開いて下さったお礼に、と思いまして。」


 その姿は先程の舞姫と同じく、露出が多く鮮やかな服。


 姫である名無しさんには、普段着る事の無い衣装である。両腕は勿論の事、太ももまでも露になっており、透けた布が腰から巻かれている。

 体の線が強調されており、胸元も開いていて、女性らしさが増す。その上、先程よりも妖艶な化粧。立っているだけでも男達を魅了した。


 琴の音が鳴り始めると、皆の酒を飲む手が止まり、シン…となる。



 舞を生業としている舞姫達よりも美しく舞い、豊かな表情をする。


 普段見せない表情。妖艶な仕草。其処に居るだけで、世界が変わる。
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