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「名無しさん、本当に明日行ってしまうの?明後日でもいいんじゃないの?」
「うぅん。だってこういう事は、早い方がいいもの。でもお姉様の為に、舞うわ。この儀の為に練習したのよ?」
「ふふ…有難う。名無しさんの舞う姿は、舞姫達より美しいわ。貴女に門出を祝ってもらえるなんて。」
「お姉様の為なら…」
姉の問いに、目を合わさずに笑顔で受け流す名無しさん。
明日は姉と、最愛の人の婚礼の儀がある。
そんな日に、本気で此処に居たいと思う人がいるの?
「見つけた…!名無しさん、曹操が呼んでたぞ?」
「…今行きます。」
最愛の人の視線は、直ぐに姉へと向けられた。
胸が、焼ける程に痛い。
「失礼します。」
「名無しさんよ、近こう寄れ。」
「はい、お父様。」
そう言って父、曹操の胸に抱かれる。
「お前には、辛い思いばかりさせてしまうな…」
「いいえ、お父様。お父様の役に立てるのならば、此の命をも簡単に捧げる事が出来ます。」
「お前には、誰よりも長く生きて、誰よりも幸せになって欲しいのだ。」
「そのお言葉だけで…。」
そう言うと、一筋の涙が流れた。
「泣くな、名無しさん。お前には笑顔が一番似合う。」
曹操は名無しさんの涙を拭うと剣を差し出した。
「此れは?」
「儂の剣だ。持って行け。」
「……有難う御座います。」