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1週間程して元気になった名無しさんは、暇を持て余していた。
城内を自由に動き回る事は許されていたので、取り敢えず部屋を出る。
あ…。諸葛亮様の処へ行けば、何か書物が借りられるかな。
そう思い、諸葛亮の下へ歩を進める。
コンコン
「はい、どなたでしょうか?」
「あのっ…名無しさんです。」
「おや…珍しいお客様ですね。」
その声に驚いた諸葛亮は目を通していた竹簡を置き、扉を開けてどうぞ、と部屋へ促した。
「散らかっていて申し訳ありませんが…。お掛け下さい」
そう言われた部屋はとても綺麗に掃除をしていて、書棚にはぎっしりと書簡や書物が処狭しと並んでいた。
唯一、机の上だけ書簡が山積みにされており、仕事量が伺えた。
執務の最中であろう、机に竹簡が広げられていた。
「あの…忙しい様でしたら改めて……
「構いませんよ、少し休憩しようと思っていた処ですから。」
諸葛亮は笑顔を向けて椅子を差し出した。お茶を淹れましょう、と茶器を用意している。
司馬懿と全然違う!部屋に入ったりしたら、よく罵られたり怒られた…。軍師様って言うのはこういう人の事を言うのね…。
お茶を淹れてきた諸葛亮が、クスクス笑う。
「百面相してますが…何かありましたか?」
「あ…いえ。司馬懿とは正反対な方だな、と考えていました。」
「あぁ、魏の軍師殿ですね。」
「はい、ご存知ですよね。彼の執務量も諸葛亮様の様に膨大で…よく怒ってました。」
諸葛亮の机を指差しながら笑った。
「目に浮かびます…。」
「その下に就いていた人も膨大な量を抱えてて…でも文句も言わずによく頑張っていて…。」
天を仰ぐ様に遠くを見つめ、思い出にふける。
「麒麟児…姜維殿……ですね?」
「ご存知なのですか!?」
フッと我に返った名無しさんが、驚いた表情で諸葛亮を見る。
「えぇ、素晴らしい人材だと思います。」
「本当は此の地に連れて来たい位でした。ふふ…彼の事を誉められると、自分の事の様に嬉しい…!」
目を細めて微笑む名無しさんに、諸葛亮も微笑む。
「そう言えば…此処へ来たのは、何かあったのですか?」
のんびりとお茶を飲んでいた名無しさんは、ふと我に返る。