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 何事もなく日が過ぎた頃、劉備が宴の準備が整ったと伝えた。


 馬超・馬岱の事だけが気掛かりなまま、宴の席へと向かう。



 夜の宴には草々たる将が集まっており、名無しさんも少し緊張していた。


 名無しさんは上座に案内されるも、"礼儀だ"と諸将へと酌をする為、席を立った。


 関羽の下へ行き、隣に座る張飛にも酌をする。傍に居た関平・星彩にも酌をし、会話を弾ませながら笑い合う。



「少しずつ…打ち解けている様だな?趙雲よ。」


 少し離れた場所で劉備が言う。


「えぇ。若い者同士の方が気楽でしょうね。」

「趙雲…お前も若いだろうに。」

「私も…ですか?」


 少し照れた様子で劉備を見る。


「馬超も名無しさんと打ち解けてくれれば良いのだが…」

「彼女は誰に対しても優しいですからね。後は…馬超殿次第です。」

「そうだな…。」

「彼も悪い人間ではない。曹操さえ絡んでいなければ、今頃は気さくな彼の事…打ち解けていたでしょうに。」

「初対面の頃よりは、だいぶ丸くなったみたいだが?」

「馬岱殿の影響かもしれませんね。彼がよく名無しさん殿を気に掛けている様で…。馬超殿も馬超殿なりに名無しさん殿を気に掛けている様にも見受けられます。」

「少しずつでも…進歩はあるのだな。趙雲、名無しさんが安心してこの城で過ごせる様に、もう少し協力してくれ。」

「はい。承知しました。」


 馬超を見やると端に座り、馬岱と2人で酒を煽っていた。


「行ってやれ。」

「では失礼します。」


 将の中でも取り分け若い関平・星彩は父とよく居る関係で仲が良い。
 その次に若い馬超と趙雲は、同じ槍の使い手として手合わせをする内に仲良くなっていた。
 馬岱に至っては視察が多い為、余り城に居る時間が少ない。城に居る際は従兄弟である馬超の傍らに居た。宴の席も、必然的に隣に座っていた。


 宴が中盤に差し掛かった所で、劉備が皆に言う。


「今日は舞姫と奏者を呼んである。余興も楽しんでくれ。」


 そう言い終えると、扉の方から奏者と数人の舞姫達が現れた。


 露出が多く鮮やかな服に、飾られた装飾、化粧。見る者の心を奪う妖艶な仕草。


 将の誰もが目をやり、見入った。馬超を除いては。


 1人酒を浴びる様に飲み続ける馬超に、名無しさんは目が止まった。
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