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コンコン
「名無しさん殿?ご準備は宜しいですか?」
迎えに来た趙雲の声がする。
「はい、今出ます。」
扉を開けると爽やかな笑顔と、眉間に皺を寄せ不機嫌な顔、嬉しそうに手を振る3人が目に止まる。一瞬扉を閉めてしまいそうになったが、聞く方が早い。
「ちょ…趙雲…様?」
「行きましょうか。」
サラリと笑顔で流す趙雲。
なんで此処にこの2人がいるの!?
趙雲の服の裾を掴み、一歩後ろを歩き続ける。
「門の前で劉備様がお待ちですよ。」
一切動じない趙雲。後ろから嬉しそうに付いて来る馬岱と、何時になく不機嫌な馬超。
程無くして劉備と合流した。
花を摘んでいたのであろう、片手には花を持っている。
「昨日のそなたと比べると、見劣りしてしまう花だが…」
「いえ、そんな事…有難う御座います。」
「今日は趙雲と馬超に警護に就いてもらい、城下に詳しい馬岱に案内して貰う事にしたから、安心されよ。」
「よ…宜しくお願いします、趙雲様………馬超…様、馬岱…様?」
引き吊りながら笑顔を作る。
「いい加減、"様"等気色悪い…。馬超でいい。」
引き吊った笑顔のままの名無しさんに、目も合わさず言い放つ。
「あ、僕もねぇ、"岱"って呼んで欲しいなっ!案内するから付いて来てねっ!」
そう言って肩に手を回す。
な…馴れ馴れしい。
前を劉備と趙雲が会話をしながら歩いている。
無理矢理肩を組み、名無しさんを引っ張る馬岱。その横を少し下がって、両腕を組んだまま馬超が歩く。
その様子を見て、劉備が笑う。
「何時の間にやら仲良くなったものだな!」
「っ……。」
我慢の限界。
「馬岱殿、離して下さい。」
「どうして?恋人でも居るの?居ないでしょ?ならいいじゃない!」
「恋人は居なくとも…大切な人は居ります!昨日の事といい…気安く触れないで頂きたい。」
怒っているのに、今にも泣きそうに顔を歪める名無しさんは、精一杯な気持ちを伝える。
「あーぁ、片想い?諦めて僕にすれば良いのに!あ!!肩を組むのが駄目なら…手、繋ごっか♪」
馬岱は名無しさんの手を握り、走り出す。
暖簾に腕押しー―とは、まさにこの事である。