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趙雲と馬超の率いる軍は城外へと野外訓練に出ていた。
自らの軍を統率すべく、実戦さながらの訓練。陣形に至るまで、鍛練場では出来ない団体での動きを視る。
1回の日程は凡そ5日間。余程の事が無い限り、城へ戻る事はない。
「馬超殿、昨夜も余り眠れなかったのですか?」
「え…?あ…否……。」
「昨日に引き続き、目が虚ろです…。少し休みましょう。」
趙雲は兵達に休息を取る様に伝え、陣屋に戻る。2日目の訓練でも、馬超が何時もの調子が出ていない事が気に掛かる。
「珍しいですね、馬超殿が睡眠不足とは。考え事ですか?」
「…否、大した事ではないのだ。」
大方名無しさん殿の事だと予想が付きますが。
「ならばしっかりして頂かないと。下への示しがつきません。」
「すまん…。」
趙雲は溜め息を吐きながら馬超を心配する。
「相談なら乗りますよ?」
「冗談を。悩みなんて無い。」
「彼女には…謝罪したのですか?」
「何故謝る必要がある。あれは仇の娘だ!」
「……。私は"彼女"と言っただけで、"名無しさん殿"とは言ってないですよ?」
「!!…狡くないか?」
「いいえ?狡くなんて…。負い目があるから、一昨日、簪を贈ったのではないのですか?」
「………。俺には岱が残ったが、家族も一族も奪われた。帰る居場所を追われ、此の地へ来た。でもあいつは…家族も居場所も…何もかもある。」
「……本気で言ってるの?従兄上。」
「なっ……岱、何故此処へ!?」
陣屋の入口で馬岱が腕を組みながら馬超を睨んで立っている。
「一昨日誘ったの、従兄上でしょ。で、本気でそう思ってるの?」
「当然だろ?あいつは…」
「…何も知らない癖に。」
「…は?」
「ねぇ、従兄上。折角来たんだし、手合わせしてよ?」
「……あ、あぁ。」
何時もと違う空気に趙雲は口が出せず、ただ2人が陣屋から出るのを見届けた。
「手加減無しだよ。」
「ハッ…当然だ!」
鋭い金属音が空へ鳴り響くと、馬超が口を開く。
「…で?何が言いたい?」
「別に。言っても分からないでしょ?」
「何だと!?」
カチンときた馬超は強く攻める。