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趙雲様に手合わせして貰える!


 昼過ぎ、ウキウキと新しい服に着替え直す。


 今迄は全身を覆う、"姫"らしい服。劉備の計らいによって追加された絹で豪華な装いで動きにくく、重たかった。


 然し今の名無しさんは違う。上は袖は殆んど無く、下は膝丈。特に装飾品も身に付けず、簪も青に替える。


 コンコン


「名無しさん様、趙雲様から言付かって参りました。」

「はいっ」


 扉を開けると趙雲付きの女官が固まった。


「名無しさん様…一体それは?」

「え?服ですか?これは……」

「その様な服装で城内を出歩かれては困りますっ。女性であり、姫様だと言う自覚をお持ち下さい。」

「ですが劉備様に所望して贈って頂い…」
「諸将の目に毒で御座います。」

「毒……。」


随分な言われ様だなぁ…。魏では何時もこの形の服ばかり着ていたんだけど。


「此処には若い将が大勢おります。万が一…万が一の事もお考え下さい。」

「…万が一って、そんな事……」

「さっ、着替えましょう!」

「…あ!趙雲様の事で、何かあったのではなかったかしら?」


 必死に話題を逸らす。


「そうでした、趙雲様から"思ったよりも早く調練が終わりそうで、何時来て頂いても大丈夫です"と言付かって参りました。」

「じゃあ私は早速行ってきま…」

「名無しさん様、着替えましょうか?」

「否、袖のある服じゃ手合わせ出来ないので…」

「まぁ!見学ではなく名無しさん様自身がお手合わせを!?」

「あ…いえ…(ヤバイ)」

「………。」

「着替えます!自分で着替えられますので…ね?」

「では外でお待ちしております。」


…取り敢えずさっき着てたのでも上から羽織っておけば、向こうで脱げるよね。


 女官の中でも年長で、長く仕えているであろう事が伺える。女官長であろう彼女に逆らうと、名無しさん付きの女官が怒鳴られる羽目になる。


 然し大人しく着替える事はせず、重ね着て部屋を出ると女官が確認し、ニッコリ微笑むと満足そうに立ち去った。


「もし今脱いで出会うもんなら…怒られるんだろうな……。」


 重ね着たせいでゴワゴワするも、諦めて歩き出した。


 足早に向かう先、其処は鍛練場。
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