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「ね、名無しさん、今日は随分と可愛い服着てるね。良く似合ってる。」
「あ…有難う。」
「宴の時の衣装の方が、もっと似合ってたけど。」
「…!!」
落ち着かせる様に優しく頭を撫でると、馬岱は席を立つ。
「ちょっと待っててね?」
そう言うと部屋から出て、馬超の部屋の扉を叩く。馬超と趙雲が部屋で待機していた。
3人が部屋に入り、落ち着かない様子で趙雲が少し離れた処から声を掛ける。
「名無しさん殿っ、大丈夫ですか!?」
「はい、もう大丈…」
起き上がろうとする名無しさんの視界が歪む。
「ちょっとっ…急に起き上がろうとしないでよ!」
慌てて馬岱が手を差し出すとぐったりした様子で馬岱に身を預ける。
「すみません…。」
「あの…昨日渡そうと思っていて忘れていたのですが…。」
おずおずと寝台に近寄って、林檎を見せる。驚いた表情の名無しさんを見て、趙雲が慌てて声をあげる。
「おっ…お嫌いでしたか!?」
「いえ…趙雲様はこうも簡単に私の好きな物を下さるので驚いてしまって…。有難う御座います。」
ニッコリ微笑む名無しさんを見て、安心した様に微笑み返す。
ふと"従兄上は何をしてるんだ"と思って馬超のいる方を向いた馬岱の目に、卓の上でせっせと林檎を剥いている姿が留まった。
全く……素直じゃないと、損するのは従兄上なのに…。
ふうっと溜め息を吐き、名無しさんに促す。
「名無しさん、折角趙雲殿が持ってきてくれたし…食べれそう?」
笑顔で嬉しそうに頷く様子に趙雲が目を細める。
余程林檎がお好きなのか…ならば今度城下へ行った時も林檎にしよう。
寝台の脇の台に置いた林檎を見ながら趙雲が嬉しそうに笑う。
「従兄上、剥けた?」
「おっおぅ……」
突然自身に声を掛けられ、驚いた様に肩を跳ねる。
お…俺、無意識に林檎剥いてた…。
「従兄上はね、僕が寝込んだ時には何時も果実剥いてくれてたから、慣れてるんだよ。だから今も無意識に剥いてたんだろうね。」
こっそりと趙雲と名無しさんに教える。
「馬超殿、面倒見が良いですからね。」
「良し悪しはあるよ…。」