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静まり返った長い廊下に、馬超の声だけが響く。
「お前には危機感と言うものが足りてないんじゃないのか!?」
「……。」
「だいたいお前は……」
ふと名無しさんに視線をさげると、瞳に涙を浮かべて項垂れている。
「おい、聞いてるのか!?」
「服……」
「は?」
「服が乱れたままなんですが…」
抱えている自分の腕を良く見ると、胸の下迄服が捲れたまま直に名無しさんの体に触れていた。
「っ……!!気付かなかった、すまない。」
名無しさんを脇から下ろすと、慌てて服を整える。
「どうも有難う御座いました。」
深々と頭を下げる様子と、突っ慳貪な言葉が噛み合わない。
馬超は慌てて先程まで捲れていた服を再度捲りあげ、名無しさんの体を360度確認し、何も問題無い体を見ると次は顔を見、首筋を見てハッとする。
既に馬超の行動の意図が分からず固まっている名無しさんに、馬超は鋭く問い詰める。
「手を出されたのは、此処だけか!?」
「…それ以上に、こんな廊下で服を捲られた私は、衝撃が大きいのですが……」
「確認する為だ、他意はない。」
「……そうですか。」
「答えになってない!此処だけかと聞いているんだ。」
茫然と立ち尽くす名無しさんの両肩を揺すりながら馬超は詰め寄ると、名無しさんは遠くを見つめ小さな溜め息を吐く。
「まさか胸にもっ……」
先程胸の下迄捲った服。それ以上上にも手を出されているのかと、慌てた馬超が、更に服を捲り上げようとした。
「馬鹿ですか、貴方はっっ!何処迄捲る気なんですか。晒巻いてないんですから止めて下さいっ!!」
「お前が答えないからだろ!?馬鹿って何だ、馬鹿って!」
怒鳴る馬超に怯む処か呆れた表情を見せた。
「此処だけですよ!貴方がさっき確認したではないですか。」
「……何だ、一つ位気にするな。」
「助けておいて、その一言ですか。」
「む……なら助けなかった方が良かったのか?」
「…それは……。」
「ならこうすれば良いだけだろ!」