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「……仲良くしてる処悪いがな、俺の第一声を忘れてないか?」


 寝台から立ち上がり、卓に戻って座り直した馬超が3人を順に見る。


「「「……あ。」」」


 "おい、出掛けるぞ" そう言って部屋に来ていた事を3人は思い出した。


「従兄上、何か用事でもあるの?」

「否…何ていうか、諸葛亮殿の命でな……。」

「やはり諸葛亮殿に怒られたんですね。」

「うっ五月蝿いぞ、趙雲殿っっ!」


 恥ずかし気に怒鳴る馬超へ、申し訳なさそうに名無しさんは口を開く。


「私…余計な真似をしてしまいましたか?」

「いや、助かった事は事実だが」
「馬超殿が彼処迄字が汚くて、内容の詰まっていない処理しか出来ないとは思いもよらず……」

「…殴られたいのか?」

「いいえ?…諸葛亮様の命ならば、報告書が必要なのでしょう?早めに戻って来て下さいね。」


 きょとんとした表情で馬超が名無しさんを見て、当然の様に言う。


「何を言う、お前も行くんだぞ?」

「…は?何処に?」

「付いてくれば分か」
「まさか僕達を置いてかないよね?」


 間髪入れずに馬岱が鋭く突っ込むと、眉間に皺を寄せながら睨んだ。


「お前ら休暇取ってないだろ?俺は任務だ、任務!」

「馬超殿、残念ながら…」
「僕達、今日は休暇取ってるよ!」


 趙雲に続いて嬉しそうに馬岱が休暇を伝える。


「何でお前等揃って休暇を…」


 驚きながら訊ねた馬超に、当然の様に馬岱が返した。


「だって名無しさんが心配だったし。ねぇ、趙雲殿?」

「はい。私は殿直々に休暇を頂いたので、外へ出られるならばお供しない訳には…」

「倒れた事、劉備様はご存知なのですか?」


 顔をしかめた名無しさんを安心させる様に趙雲は笑って答えた。


「貧血で倒れた、という事になっておりますので、ご安心下さい。」

「あ…あぁ、それならば…。」

「で、従兄上?行き先も教えずに名無しさんを何処に連れ込もうと?」

「岱、口が悪いぞ。諸葛亮殿に "昨日から城下で舞姫や歌姫達が派手に魅せてくれているみたいですよ" と言われてな…」


 罰が悪そうに頭を掻く馬超に、馬岱が食い付いた。


「要するに、舞姫達の余興を高見の見物しに行く、って訳?」

「まぁ…様子見だ。今朝方からも城下で賑わっているらしくてな。」
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