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 怒りに委せて荒々しく声を上げるが、夏侯惇の言葉に引っ掛かる。


「戦場に立たせる為ではない。護身の為に、だ。淵もそう言っている。」

「護身の為…か。」

「母親が亡くなってから、学問は学んでいない状況だ。元々覚えは良い、武芸を学びながらでも、遅れた分は取り戻せる。」

「…お前と淵が武芸を見ると言うのか?」

「そうだ。」

「…ならば任せよう、好きにするが良い。然し1つでも怪我を負わせてみろ?容赦はせんぞ。」


 それだけ言うと曹操は部屋を出た。


さて…何時から稽古をつけようか。出来るだけ早い方が良い。稽古をするだけの体力は……ある。あれだけ毎日追い掛けたんだ、名無しさんの年頃の男以上はある筈だ。


…取り敢えず淵に相談するか。


 夏侯惇も部屋を出て、夏候淵の下へと向かった。


***


 昼食を食べ終えた徐晃は、再び訓練場へと向かう。兵達が戻るより先に、体を動かし始める。


「名無しさん殿…大丈夫であろうか。」


 心配そうに天を仰ぐ徐晃の傍に、夏侯淵がやって来た。


「おっ、徐晃じゃねぇか!今から訓練か?」

「夏侯淵殿!そうでござる。今は体を動かしておりました。」

「お前…何時も固いな。もっと砕いて話しゃぁいいじゃねぇか。」

「その様なご無礼は…。」


 頭を下げる徐晃に夏侯淵は軽く溜め息を吐く。


「な、訓練の前に、いっちょ俺と手合わせしてくれよ、な?」

「承知つかまつった!」

「固ぇ……。」


 手合わせをしてだいぶ息があがってきた頃、少し怒った様子の夏侯惇が寄って来た。


「淵、こんな処に居たのか。探したぞ?」


 武器を下ろし、2人は夏候惇の方を見る。


「あ?惇兄ぃ、何か用か?」

「…お前が朝、俺に押し付けた事をもう忘れたか!?」

「あ、名無しさんの事か。どうなったんだ?」


 名無しさんの名を聞き、ふと先程の事を思い出した。


「夏侯惇殿…」


 会話を割って入り、申し訳なさそうに徐晃が口を開く。


「どうかしたか?」

「昼前に名無しさん殿が泣いておられた。」

「何!?関羽の奴が泣かせたのか!?」


 一気に殺気立つ夏侯惇を宥める様に首を振りながら徐晃は言う。


「否、関羽殿は名無しさん殿に手を挙げたりしないでござろう…。」

「手を挙……どういう事だ、徐晃!!」


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