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月日が流れ、名無しさんは幼い面影が少し残ったまま成長した。母親譲りの美しさに磨きがかかって、今迄よりも尚一層曹操の寵愛を受けた。
年は14になり、兵法武芸に通じるまでになり、様々な芸を身に付けていた。
「元譲!今日の稽古は元譲でしょ?」
勢いよく夏侯惇の部屋の扉が開かれた。
「お前っ…!扉を叩いて、返事をしてから入れと何時も何時も言っているだろうに…」
「別に疚しい事ないならいいじゃない。それともあるの?」
まじまじと夏侯惇を見る。
「阿呆か。何もない。」
「ならいいでしょ。ね、早く!」
「少しは淑やかになれんものか…。」
「出来るよ?外面作りも覚えたもん。でも元譲に必要ないでしょ?」
「確かにな。…先行ってろ。」
「はぁい。」
長い廊下を軽やかに歩いていると、張遼と徐晃に出会った。
「お早う。張遼、徐晃!」
「お早う、名無しさん殿。」
「お早う。今日もまた随分と美しい…」
「張遼?昨日と何も変わってないんだけど…?」
「日に日に成長しておられるぞ。こんなに小さくて走り回っていた名無しさんが、何時の間にかこれ程大きくなって…」
手を腰より低く下げ幼少の頃の身長を示し、嬉しそうに語る張遼の隣で、徐晃が笑顔で頷く。
「よく後ろを追って、走ってこられていた。」
「ふむ。"ちょうりょーう!"と言って抱き着いてきた頃が懐かしい…。……如何ですかな?」
両手を開いて受け止める体制の張遼に、特に気にする訳でもなく何時もの様に両手を広げ、その胸に納まろうとする名無しさん。
「阿呆か。そのまま張遼に喰われても知らんぞ?」
手を開いたまま一瞬動きを止めた名無しさんが振り返ると、後ろに夏侯惇が立っていた。
「失敬な!喰う等と」
「じゃあ、どうする気だ!?」
「……美味しく頂きます。」
「…一緒だろうが。」
溜め息を吐く夏侯惇を、会話を全く理解していない名無しさんが首を傾げながら覗き見る。
「…どういう意味?」
「孕むぞ、って意味だ。」
「!!」
驚いた名無しさんは夏侯惇の後ろに隠れ、張遼を怪訝な顔付きで見る。
「ハハハ。名無しさん、抱き締めただけで孕む訳なかろう?今迄にあったか?」
「……だよねぇ。」
ホッとした表情で張遼に駆け寄り、侘びる様に抱き着いた。
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