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あー…食堂飛び出して来ちゃった。


 名無しさんが向かう所は決まっていた。食堂で林檎が出たら、必ず向かう処があるー―。


「お母様、今日もお母様の好きな林檎、お持ちしました。張遼の分貰ってきちゃったんだけど。」


 微笑みながらお墓の前に立つ。


「あのね、姜維って人が仕官してきたの。司馬懿に就くみたいだから、性格が歪んでしまわないか心配で…。」


 ちょこんとその場に座る。


「元譲ったらね、私そっちのけでお父様の執務に付き合うのよ?お父様も、もう少しまともに執務をして頂きたいものよね。」


 苦笑いを浮かべながら続ける。


「お母様が居なくなってから随分経ったけど、まだ皆に守られているの。早く強くなりたいんだけど…。」

「名無しさんよ、何故此処にいる?」

「あ、子桓。お昼に林檎が出たから…。」

「1つ丸ごと持って来れば良かろう。」


 1/4に切られた林檎を見ながら、て曹丕は墓前に葡萄を置いた。


「ふふっ子桓が来てくれると、必ず葡萄が置いてあるね。」

「私とて名無しさんの母には世話になったのだ。これ位良かろう?」

「うん、有難う。嬉しいよ。ところで…狩りに行ってたんじゃないの?」

「仲達に聞いたか…。奴から逃れる為の手段だ。自由になる時間も与えてくれんのだ。」

「司馬懿だもんね。」


 仲睦まじい姿に出るに出られなくなった張遼と徐晃が身を潜める。


 本来仲が良い2人が、こうやって肩を並べる時間が随分減った事を張遼も徐晃も知っているからだ。


「名無しさんと話すのも随分久しいな。」

「1ヶ月振りだね。同じ城に居るのに…。」


 少し寂しそうに視線を落とす名無しさんを見て、肩に腕を置き、覗き込む。


「名無しさんが私の部屋に来れば良かろう?」

「子桓の部屋は…行き辛いよ。」

「…ならば仲達の執務室へ来い。茶位は出してやる。」

「ありがと。…でも淹れるのは司馬懿なんでしょ?」


 当然だ、と言い放つ曹丕に名無しさんが笑うと曹丕も笑う。


 普段曹丕がこの様に笑う所等見た事の無い張遼と徐晃は、驚いて互いを見やる。


「…不思議な光景ですな。」

「…そうでござるな。」



「ところで……」


 曹丕の体が反転した。


「お前達は何時迄そこに隠れているつもりだ?」


「!!」



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