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先程目を覚ましたばかりの姜維は固まっていた。
此処は昨日少し拝見した名無しさん様の部屋で。名無しさん様の寝台で何故私が寝ているのか。
慌てて逆回転をする頭を正常に動かす為に、一つ一つ整理する。
「まず宴があって、お酒を飲んで。それから名無しさん様と剣舞を。それから酔いが廻って………今に至る。途中の記憶が無い。」
一瞬にして顔面蒼白になる。
「まさか…名無しさん様に間違って手を出してたりなんか…」
寝台に座ったまま頭を抱えている。
「…夏侯惇殿、そろそろ部屋に入って説明をしてやるべきでは?1人焦っている声が、外に迄漏れているでござるよ。」
「フン…記憶を無くす程酔って、名無しさんの部屋まで使ってるんだ。良い薬だろ。」
そういう貴方も酔って運ばれた…否、拙者が運んだでござるよ。…なんて口が裂けても言いはしない。
長い間廊下で立ち聞きをしていた所為か、見かねた徐晃が扉を叩こうとした時、夏侯惇が勢い良く叩いた。
ドンドンッ
「どぅわぁぁぁぁっ!!」
中に入ると音に驚いたであろう姜維が、寝台から転げ落ちていた。
「…酔いは覚めたか?」
「将軍……。お…お陰様で。」
ビクビクしながら様子を伺う姜維が余りに面白くなって、夏侯惇と徐晃が笑った。
「姜維殿が考えていた様な事は何もないでござるよ。そう、心配なされるな。」
「……え?」
「外迄、声が漏れていたからな。」
腰の抜けた姜維を立たせながら夏侯惇は付け加えた。その瞬間、姜維が頬を真っ赤に染めた。
「まだまだ若いな。今度城下の遊廓に連れて行ってやろうか?彼処には中々の美」
ドゴンッッ
「しっっんじらんない!目が覚めて元譲が居ないから、取り敢えずと部屋に戻って来てみればっ!」
後ろから飛び蹴りを思いっきり夏侯惇の後頭部に決め、地面に叩きつけた。
勿論徐晃は後ろから来る名無しさんの気配を知っていて止めなかったし、姜維は殺意の込められた鬼の形相をした名無しさんの姿が見えて避けたのだ。
「俺…二日酔いで頭痛い事…」
「分かってて頭に入れたけど何か?」
「お前……」
「姜維にそんな処勧めたりしないで。若いんだからそんな処にお世話にならなくても、恋仲の1人や2人すぐ出来るわよ!」