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「何か…アンタ……いや、名無しさん様の部屋ってごちゃごちゃ飾り付けてないんだな。」


 城の内部に入る事は勿論、曹操の娘である名無しさんの部屋等初めて見る。此処へ辿り着く迄に煌びやかな装飾の数々を目の当たりにした龍檸は、質素な部屋に驚きを隠せない。


「私には私の趣味があるわ。ごちゃごちゃ飾り付けてたって仕方ないでしょ?」


 扉を開けて夏侯惇を待っていた名無しさんは溜め息を漏らす。


皆が皆、贅沢してる訳じゃないんだけどな…やっぱりそういう風に見えるのかしら。


「すまないな…」


 部屋に入った夏侯惇が軽く礼を言うと、龍怜を寝台に降ろした。


「熱が上がっている様だが……水桶要るな。」


 部屋を出た夏侯惇。女官を見つけるが先か、自身で用意する方が早いか。名無しさんの部屋の周りには女官が居ない。


「龍檸、奥に…小さい寝台あるでしょ?それ使ってね?」

「あ、ありがとう。」


 夏侯惇が部屋へと戻ってきた。


「…早かったね。」

「水桶だけ持ってきた。水も布も、部屋にあるだろ?」

「うん、あるよ。その顔は…女官に会えなかったんだね。」

「フン…これ位自分で運べる。」

 夏侯惇は水進んで桶に水を入れ、棚から布を用意する。


「あ…あの……」


 2人の会話に龍檸は恐る恐る割って入った。


「…ん?どうしたの?」

「名無しさん様は…その……何処で寝るんだ?」


 一瞬目を合わせた名無しさんと夏侯惇だが、すぐに夏侯惇に逸らされた。


「ちょっと…」
「今日は張遼辺りと約束してたんじゃないのか?」

「…してたっけ?」
「名無しさんはもうお忘れか?」


 突然背後から抱き締められた。


「い…何時の間に……」

「先程から。徐晃殿と姜維も一緒ですぞ?」


 無理矢理張遼から離れて体を捻り、後ろを振り返ると、徐晃と姜維が居た。


 徐晃は何とも言えない顔をして、名無しさんの傍に寄り、優しく頭を撫でた。


 張遼も徐晃も、名無しさんが何をしたのか、これから何をしたいのか、目を見れば全てを理解出来たからだ。


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