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「名無しさん殿!司馬懿殿を放って来たが、良いのであろうか?」
「大丈夫、大丈夫!多少の事では死なないから!」
「そうは言っても……」
悠長な会話を交わしながら、走っているのは屋根の上。騒ぎに乗じて名無しさんと徐晃は再び屋根の上に飛び乗った。
夏侯惇に終われた曹操は曹丕を投げ付けて一旦は難を逃れたが、夏侯惇と曹丕に追われる羽目となった。
「父上よ…遊びと言えど、息子を盾に売るとは如何なものか。」
「お、落ち着け子桓、……な?」
「……挟み撃ちにするか。無駄に体力を使いたくない。」
「叔父上、私にお任せあれ。」
体力の尽きかけた曹操に、曹丕は先程の仕返しと言わんばかりに容赦なく畳み掛けた。
「子桓、貴様………。」
「よし、よくやった!あとは名無しさんと徐晃だな!」
***
「龍檸ー!どうですか、捕まえられましたか?」
ほぼ皆の鉢巻きが青に変わった頃、龍檸と姜維が合流した。
「姜維様……俺、紫の、捕まえた!簀巻きにした!」
ほら彼処に…!と指を差す。姜維の視線の先には簀巻きにされた司馬懿が横たわっていた。
「うわぁぁぁぁっ!司馬懿様ぁぁ!」
慌てて上官に当たる司馬懿の縄をほどいた。頗る機嫌の悪い司馬懿に睨まれ、ただただ視線を逸らすしかない。
「自身の部下の面倒はしっかり見ろ。部下の部下だ、今回だけは大目に見てやる。」
「……は…ぃ?」
私の部下…と、仰いましたか?
「名無しさんの判断だ。」
姜維の耳元で小さく囁くと、城の中へと戻って行った。
「きょーい…様?」
首を傾げて様子を伺う龍檸に笑顔を向けると、溢れんばかりの笑顔が返ってきた。
「流石龍檸ですね!あと少しですよ。まだ行けますか?」
「おうっ!まだまだ大丈夫だ!」
さて、名無しさん様の行きそうな処は……
城に入ってからはずっと名無しさんの傍で行動を共にしてきた。名無しさんが勉強をしている間は司馬懿からの執務をし、鍛練場に行けば姜維も一緒に手合わせをした。龍怜の看病も龍檸の相手も。食事の席も、悪戯も、付き合い続けた。
「あ、そう言えば将軍の姿が無いですね……もう捕まえたんでしょうか。」
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