□13
1ページ/8ページ


 名無しさんの声で朝から集まった将に加え、副将達までもが加わった宴は武人ばかりでとても賑やかだった。悩む事なく末席に座ろうとする龍怜を夏侯惇は引っ張って上座に近い席へと座らせた。


「あるんだろ、話が。」

「あ…あのでも……」
「元譲?龍怜もどうかしたの?」


 狼狽えている龍怜に目が留まった名無しさんが夏侯惇に訊ねたが、何とも歯切れの悪い回答だけが返ってきた。


「否、そのうち……な?」

「……?まぁいいや。龍怜達よろしくね。私準備があるから。」

「おう、行って来い。」


 ほんの少し顔を出して直ぐに名無しさんは下がった。上座の近くに龍檸を連れた張遼・徐晃・姜維達も座り、諸将も集まった。正座をして縮こまっている龍怜の緊張が強まり、酒を注いで貰っている夏侯惇を見る。


「私が座っていても良い場所には、到底思えませんが。」

「そうか?龍檸を見てみろ。肝の塊だぞ。」


 言われて見て見れば、曹操達が座ってもいない内に既に龍檸は出されていた食事に手を出していた。


「なっ……龍檸!?」

「兄者!凄く美味しいぞ。おかわりしてもいいのかな!?」

「龍檸は良い食べっぷりだな。好きなだけ食えばいい。」


 酒をのみながら張遼がそう言うと、龍檸は嬉しそうに食べ続けた。龍怜は冷や汗を流しながら鎮座している。


「龍檸は酒が飲めんしな。いいんじゃないか。……お前は飲まんのか?」

「いえ、私は……」

「そうか。なら食え!退屈だろうに。」


 そんな畏れ多い…と龍怜が首を振った時、曹操が宴に顔を出した。後ろには曹丕と、不機嫌この上無い司馬懿が続いた。


「む…盛り上がりに欠けるな。皆の者、もっと飲まんか!」


 上座に座って声を掛けると、皆が盃を上げた。その隣に曹丕が座り、傍には司馬懿も腰を下ろした。


「何故私まで参加せねばいけ」
「名無しさんの遊びに付き合った者は全員参加だと言ったではないか。貴様の耳は聞こえていないのか?」

「そうは申されても、此処は武人の宴。私の様な軍師が参加する様な場所では……」


 曹丕の言葉に小さく返答すると、少し考え込んだ曹丕が納得した様に手を叩いた。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ