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 案の定、朝はパニックだった。気付けば抱き締めた筈の名無しさんが腕の中におらず、仲良く夏侯惇の腕の中で丸くなっている名無しさん。満更でもなさそうに抱き締めている夏侯惇を見て、恨めしそうに唇を噛み締める張遼。


 未だに起きる気配の無かった姜維へ、容赦無く飛び乗る龍檸。踏まれた蛙位の可愛らしい声ならまだしも、踏み潰されたのではないかと思う程に、一度奇怪な声を発して仰け反った後、ピクリとも動かない姜維。そうとも知らずにまだ寝てるのかときゃっきゃと騒ぐ龍檸。


 その声に目を覚ました龍怜……はまだ良い方だろう。目覚めた時の対処にと残った徐晃がつい寝入ってしまった為、今の惨状に繋がった。


「お、お早うございま……す?」


 顔面蒼白のまま振り向いたのは徐晃で、笑顔が引きつっていた。もう、何処から手を付けたらいいか分からない状態だった。


「あ、兄者、おはよう!」

「おは……!きょ、姜維様から降りなさいっっ!」


 ひっぺ返された龍檸は幾分不服そうに頬を膨らませている。


「ちょ、張遼殿……そろそろ姜維殿と龍檸を連れて調練に向かわぬか?」

「名無しさんが夏侯惇殿から離れる迄、調練も糞も無い!っ……起きろ名無しさん、ほら、私の腕も胸も空いているぞ!」


 無理矢理引き剥がそうと張遼が名無しさんを引っ張りだした。うぅん…と眉間に皺を寄せながら名無しさんが唸ると、余計に夏侯惇にしがみついたのは無理もない。夏侯惇も抱きつかれれば抱き締め返すし、悪循環なだけだった。


「張遼殿……」
「張遼様って、意外と大人気ないん」
「龍檸っ!」


 龍檸が肩を落として呆れた目で張遼を見ながら言った所を龍怜が後ろから口を押さえた。


「んーっんんー!」

「龍怜殿、龍檸、慣れれば何時もの事でござるよ。」

「……何と言われようと推して参る所存。名無しさん、さぁ起きろっ!」

「……本当にすまないが、龍怜は夏侯惇殿が起きてから指示を仰いでくれ。拙者は…取り敢えず姜維殿を部屋に運ぶでござる。」

「はい、龍檸をお願いします。」


 徐晃が溜め息を漏らしながら姜維を抱えて肩に乗せ、龍怜に小さく微笑んでから龍檸を連れて部屋を出た。


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