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「………。」
チラリと見れば、昨日はあれ程尊敬した張遼が名無しさんを引っ張っている姿は何とも言えない。
「ちょーりょぉぉぉうっ!痛ぁいっっ!!」
「うをっ名無しさん、何だっっ!?」
いい加減離せと言わんばかりに掴まれた腕をブンブン振ると、張遼が突然の名無しさんの声に反応して咄嗟に離した。反動で背を向けていた夏侯惇の上に転がり、声と重みに驚いた夏侯惇が名無しさんを抱えて跳ね起きた。
「っ………頭痛ぇ、飲み過ぎたか?」
「あ、おはよう元譲。結構飲んでたもんね。…取ってくるよ。」
「あー……すまん。…て、おい、何でお前の部屋…と言うか床なんだ?」
「昨夜此処で飲み直されたまま皆様眠られて……」
おずおずと話す龍怜の言葉を聞き、少しの間を置いてから あぁ…そう言えば、と2人は納得の表情を見せた。名無しさんは納得すると立ち上がり、部屋を出た。
「……私は無視ですか。」
「おぉ、張遼。居たのか。」
「……ずっと居りましたが。」
じとっとまとわり付くような視線の張遼に夏侯惇はすまん、と一言漏らして龍怜を見た。
「随分と迷惑を掛けたな。」
「いえ、私は何も……」
「徐晃達の姿が見えんが?」
龍怜が事の経緯を説明すると、夏侯惇は額に手を当てて天を仰ぎ見た。徐晃にまで迷惑を掛けたか、と落胆したが、後で謝らねば…と気を持ち直した。
***
「御医ー……」
医務室を訊ねた名無しさんは何時ものように医師の下を訊ねた。夏侯惇が酒を飲み過ぎた翌日は、常に薬湯を取りに来る。前日に前もって医師に声を掛ける徹底振りだ。
「お早う御座います、名無しさん様。私は此方に。」
何時もの覆い被さる程の書簡竹簡が積み重ねられた部屋の奥から顔を覗かせると、溢れんばかりの笑顔で微笑んだ。
「久し振りですね。」
「…?ちょっと前までは龍怜の薬湯を取りに来てた…けど?」
「いえ、将軍の薬湯を運ばれるのはとても久し振りです。」
「あぁ、そういう事ですか。」
ニコニコと医師が言うから、つられて名無しさんも笑った。
「名無しさん様は大丈夫ですか?少し酒の匂いが混じっておりますが。」
「あー、うん、ちょっとだけ飲んだ…かな。でも全然!」
ならば良いのです、と薬湯を差し出すと、そっと受け取り夏侯惇の下へと急いだ。
***
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