DISSIDIA

□寒い寒いこの季節
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「ぶわっくしょい!!!!」



キン、と張りつめた空気が辺りを包み込み、身も凍るような気温の中庭で花壇の手入れをしていたフリオニールは盛大なクシャミをした。上からイヤーマフ、マスク、マフラー、ダウンジャケット、腹巻き、ヒートテック、靴用カイロと万全を期して庭の手入れに取りかかったが、如何せん寒すぎる。ポケットから手を出せずにはや十分が経過していた。



「絶対おかしいぞこの気温は…………。」



第一、今までこの世界に気温の概念はあまり無かったはずだ。暖かいと感じるのは次元城ぐらいで、他のフィールドはあまりそういった事象とは関わりがなさそうだったため気にすらしていなかったのだが……。



「秩序の聖域に氷が張るなんて今まで無かったのに……。しかも雪まで降ってくるし……。」


花壇も椿に切り替えかとため息を吐き、今日の手入れを諦め部屋に入ろうとした………………………が、庭に何か巨大な浮遊物を発見してそれは叶わなかった。



「……………何、やってるんだ?ティーダ…。」

「おっ!のばらもブリッツボールやるっスか??」



巨大な浮遊物の下を見れば、腰に手を当てニコニコと太陽のように笑う青年ティーダ。完全防備のフリオニールに対し、彼の容姿はいつもの短パン半袖胸全開という今の気温には余りにも似つかわしくない恰好だった。

ティーダの奥を見れば、それに向かってフラッドを連発するバッツとティナ、シフトブレイクで水と雷を巻き上げるジタン、水のイラプションをかますヴァン、半重力装置を起動するライトニング、その装置にサンダラを使うルーネスとスコールがいた。ちなみに全員いつもの恰好だったりする。



「四人の水系の技とジタンのシフトブレイクで起こる雷、ルーネスとスコールの黒魔法でライトニングの半重力装置をパワーアップさせて作ったスフィアプールッス!!!!」



ちなみに考案は俺だぜ!と得意気に話すティーダに、フリオニールの言語脳はツッコミが追い付かなくなっていた。



「『悲しみの水泡よ……』……………………これだけあれば十分かしら?」



フラッドを唱え終え、ふうっと息をもらすティナにルーネスが笑いかける。



「ティナはブリッツやる訳じゃないのにごめんね?すっごく助かったよ!!」

「ううん、いいよ。見てるだけでも楽しいし!」



一方、疲れたように座り込むジタンとヴァン、スコール。



「まさかシフトブレイクをこんな使い方するとは思わなかったぜ……。」

「だよなあ……、ただでさえ今日は寒いから見てるだけで寒いよ。」

「…………………。(…………何でわざわざプールを作るんだ。)」



スコールの心の声を聞き取りながら、ライトニングがぼさっと呟く。



「―――――後は温水にするだけだ。スコール、頼むぞ。」

「(また俺か!!!!)」



ドローしてジャンクションするという彼の能力はとても便利なもので、最早一家の中で便利屋として認識されている。スコールにとってはいい迷惑である。
ブツブツと文句を垂れるが自分もブリッツをやる一人である。しぶしぶファイラを唱えた。



「…………………。」



そんなやり取りをポカンと見ていたフリオニールが、やっと口を開いた。



「……………お前ら、まさかこんな寒い日にブリッツボールをする気か!!!?風邪ひくぞ!!!!」



冷や汗のスコールをダラダラと流しながら叫ぶフリオニールに、ライトニングが答える。



「だから温水プールにするんだろう?主にスコールの力で。」

「それでも問題ありすぎだ!!ルーネスとジタンが風邪を引いたらどうするんだ!!」

「「子供扱いするなァァァァァァ!!!!!!!」」



涼しい顔でさらりと言う成人女性21歳。フリオニールに飛びかかるちびっこコンビ。自分の苦労はどうなると睨み付けてくるむっつり青年17歳。当たり前の事話しただけなのに!!と彼は泣きたくなった。



「まあまあそうカッカすんなよのばらくん!!こんな寒い日はスポーツすんのが一番だぜ?」

「そのスポーツが水を使うブリッツだから問題があるんだろう!!?あと俺はのばらじゃ……………………………………もう、疲れた。」



のんきにけらけらと笑うバッツにフリオニールは怒る気力を失い、ため息をはいた。



「大丈夫だよフリオニール!風邪ひかないように気をつけるからさ!!」

「そうだぜ、終わったらこたつで丸くなっとくからさ!!」



ちびっこ二人の言い分(特にジタンの)に問題を感じながらも成す術無く、フリオニールはブリッツを了承した。




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