novel

□The Star Festival
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病室のドアを開けると
開け放たれた窓から入る初夏の風に
カーテンが大きくはためいていた


生温かい風は
ベッドで眠る彼の繊細な髪の毛を優しくなでる



彼の表情は昨日と何も変わらない
変わったのは昨日私の不安を駆り立てた機械音が無くなったことだけ








私は病院に向かう途中にある花屋で買った笹の葉を花瓶に入れ、窓の側に置いた

風が吹くたびにこすれ合う笹の葉の音は
とても心地が良かった












「日渡君・・・」
ベッドで眠る彼の頬に手を当てる



「今日、約束の七夕の日だよ?」
聞こえてないのは分かってる



「ここに来る途中に笹の葉買ったんだ。二人の願いを短冊に書いてつるそうよ」


そう言って私は鞄から短冊とペンを取りだして、短冊の上に想いをすべらせる


「私の願いはね・・・」






―・・・ずっと、日渡君の側に居られますように・・・−








今にも溢れだしそうな涙をこらえながら
短冊を書きあげた
椅子から立ち上がって、笹の葉に短冊をつるそうとしたとき
日渡君の手が少し動いたように見えた







「ひ・・・わたり・・・く・・・ん?」



窓から入ってきた強い風が純白のカーテンを大きく揺らす
そして笹の葉も大きな声をあげた




その音に導かれたかのように

彼はゆっくりと
目を覚ました









「は・・・ら・・・だ・・・?」

深蒼の瞳が
ぼんやりと私の瞳を見つめる


私の瞳からは
堰を切ったように
大粒の涙が溢れてきた



「日渡君!」

私は嬉しさのあまり
まだベッドに仰向けの状態でいる彼に抱きついた


「良かった!本当に・・・」


泣きじゃくる私の頭を日渡君は優しく撫でてくれた




「君の声が聞こえたから・・・ありがとう」



耳元でささやかれる彼の声はとてもとても優しかった
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