novel
□寝顔
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2人っきりの教室は時間が止まったかのようだった。
その時怜がゆっくりと目を開いた。
澄んだ蒼い瞳が梨紗をぼんやり見つめている。
「原、田…?」
「ひ、日渡君?!」
梨紗はさっきの事が怜に気づかれたかと思ったが怜は依然きょとんとしていた。
(良かった…気づいてないみたい)
「日渡君こんな時間までどうして教室にいたの?」
「君が図書委員って知ってたから…」
そういうと怜はゆっくりと体を起こして梨紗を見あげて微笑んだ。
「待ってた…君を」
梨紗の頬が嬉しさと恥ずかしさで赤くなる。
「一緒にかえろ?」
「ああ…」
ゆっくりと椅子から立ち上がる怜。
その瞬間、梨紗は今度は怜の唇に自分の唇を重ねた。
2人だけの空間、
開け放たれた窓から爽やかな風が駆け抜ける。
ゆっくりと梨紗は怜から離れた。
怜の眼は驚きで見開かれている。
「はら…だ…?」
驚く彼をよそに梨紗は満面の笑みを見せた。
「早くかえろ?下校時刻過ぎちゃうよ?」
遠くの方では時計台の鐘が鳴り響く。
夕焼けに染まったオレンジ色の道に2人の長い影が寄り添うように写しだされていた。
→あとがき