novel

□聖なる夜に愛を誓う
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12月24日 クリスマス・イブ

世界中の恋人たちが愛を確かめ合う日

そして東野町でも2組のカップルが
永遠の愛を誓う

















聖なる夜に愛を誓う













12月24日
世界中がクリスマスムード一色に染まる中
東野町のメインストリートも
煌びやかな電飾と軽快な音楽に包まれ
多くの恋人達で賑わっていた

大助と梨紅もその中の一組

二人はメインストリートの中央広場にある大きなクリスマスツリーを寄り添いながら見つめていた

「綺麗だね。クリスマスツリー」
「うん。」

ふと横を向くと寒さで紅潮した頬とツリーに見とれて輝く瞳の横顔
今日の梨紅はいつものカジュアルなスタイルとは違って、落ち着いた黒をベースとしたワンピースを着ているせいもあってか、いつもに増して大人っぽく綺麗だった
大助はしばらくその横顔に見とれてしまう

「どうしたの?丹羽君?」
そんな大助の視線に気がついたのか
梨紅は柔らかい笑顔を大助に向ける
街を彩るどんな装飾よりも美しく輝くその笑顔は
大助にとって世界で一番美しい宝石だった

そして大助は胸に秘めていた言葉を切りだそうとする
「あの、梨紅さ・・・?!」
「きゃっ!?」



人ごみの中を掻き分けて走ってきた中学生くらいの男の子にぶつかられて梨紅はバランスを崩し倒れそうになる

それを大助はしっかりと優しく自分の腕の中に引き寄せる

「大丈夫?梨紅さん?」

梨紅が自分の足で立つのを見て
大助はそっと手を離す
梨紅の透き通るような肌が赤みを帯びていく

「あ、ありがとう丹羽君・・・」

「待って、ワンピースに汚れがついてる」
さっき少年とぶつかった時についたのだろうか
大助は自分の上着のポケットの中からハンカチを取り出そうとした

その時
小さな箱がポケットから滑り落ちた
箱に真っ白なリボンが巻かれた
真っ赤な立方体の小箱
大助はそれを落したことに気づいていない
梨紅はすっと座って拾い上げた

「丹羽君・・・これ・・・」
ハンカチを手にしたまま
目の前の大助の表情が一瞬にして固まった

「うわあああ、ごめん!梨紅さん!!」
今度は大助が頬を赤く染める番だ

「ちょ、ちょっと丹羽君・・・どうしたの?」
「こ、これは、その・・・梨紅さんにっ・・・!」
「私に・・・?」
今や目の前の大助の頬は
梨紅の掌の中の小さな箱の色と同じくらい
真っ赤に染まっている

「これ、開けてもいい?」
「うん・・・」

するするとリボンを解き
開いた箱の中には
小さなルビーをあしらった指輪が
入っていた

「丹羽君・・・これ・・・」

「梨紅さん!!」
まだ少し赤らんだ頬で
大助は梨紅を真剣に見つめる
「梨紅さん・・・聞いて欲しいことがあるんだ」
「うん」
梨紅は大助の真剣な表情に応えるように
真っ直ぐに彼に向き直る


「僕にとって梨紅さんは僕の支えであって、本当にかけがえのない存在で、ずっと梨紅さんの側にいて、梨紅さんを守りたいんだ・・・」
嘘偽りなど無い素直な気持ち
互いを見つめる瞳が熱くなる

「だから・・・大学を卒業したら・・・・・・
僕と・・・・・・・・・・結婚してください!!」
大助は思いっきり頭を下げた

突然のプロポーズに周りのカップル達は驚いて二人の行く末を見守っている





しばらくの沈黙が続き
大助は恐る恐る顔を上げた

目の前の梨紅の
大きな瞳からは
大粒の涙が止まることなく流れ出していた

「梨紅さん・・・もしかして、いやだった・・・?」
「嫌じゃないから泣いてるの!嬉しいから泣いてるのよ!!」
そう言って梨紅は大助の胸に飛び込んだ

周りのカップル達は二人のゴールインに祝福の言葉を思い思いに述べていたが
もはや二人の耳には届いていない

「丹羽君・・・私もずっと丹羽君といたい・・・」
囁くような梨紅の声は
大助に対する愛しさに満ち溢れていた

「大好きだよ、丹羽君」


「ありがとう、梨紅さん」



大助は彼女の冷え切った右手に握られていた指輪を取り
彼女の左手の薬指に静かにゆっくりと嵌めていく


指輪の上で赤く燃えるように輝くルビーは
この世のどんな宝石よりも綺麗で
世界で一番輝く彼女の笑顔を映しだしていた


























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