novel

□聖なる夜に愛を誓う
2ページ/4ページ

「梨紅、良かったね…」


広場のクリスマスツリーの前で恋人と愛を誓った姉を
妹の梨紗は遠くの物陰から見守っていた


見つめる先の姉は
20年間ずっと見てきた中で
最高に綺麗で
最高に幸せそうだった



そんな彼女を見ていると
まるで自分のことであるかのような嬉しさと共に
ずっと待ち続けている
大切な待ち人の顔が脳裏に浮かぶ



「梨紗!」


声の主の方を振り返ると
そこには今しがた彼女の脳裏に浮かんだ
愛しい待ち人だった

「日渡君」

仕事場から走ってきたのか、怜の息は少し乱れ頬が赤く染まっている

「すまない、仕事が長引いてしまって…」

スーツ姿の彼はネクタイを緩める

怜は高校卒業後、海外での大学卒業資格と周囲の者からの推薦を受け、刑事として働いていた

一方、梨紗は高校卒業後大学には進まずに、昔から好きだった服のブランドのショップ店員となった

大助と梨紅と違い
高校卒業と同時に社会に飛び出した2人は
多忙な毎日に追われて
2人きりで会える時間は少なかったが
それでもこうしてたまに会える時間が
2人にとってはかけがえのない時間だった



「ううん。大丈夫だよ。今日もお疲れ様。」
そう言ってふわっと微笑む梨紗。その笑顔に怜も自分の表情が自然に緩むのが分かる

「ありがとう」

彼の優しい笑顔は
いつでも梨紗の心を高鳴らせる
梨紗はこの彼の笑顔が大好きだった

「早くディナーのお店いこっ!すっごくお洒落なお店でずっと楽しみにしてたんだよ!

赤くなっていく自分の頬を隠すように
梨紗は怜の手を取り歩き出した

すれ違う人皆の注目を集める美男美女のカップルは
輝く街路に溢れる恋人達の中に溶け込んでいった


→Next
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ