novel

□新しい夜明け
1ページ/3ページ

新しい年の始まりは
いつも
今まで見たことの無いものを
たくさん見てみたいと思うんだ

年の始めに
決して相容れない君の
本当の心を覗けたこの1年は

きっと

僕らの未来にとって
素敵な1年になるんじゃないかな







―新しい夜明け―




1月1日

大助にとって激動の1年がようやく幕を閉じ、
新しい1年が始まる

去年は
初恋の人、梨紗にフラれたその夜に
初めて自分の家業について知らされ
ダークという自分とは似ても似つかぬもう1人の自分に翻弄されながらも
梨紅という素晴らしい人と恋仲になり…
と、とにかく色々な事があった

「今年は良い1年になるといいな…」

朝日が差し込む机の上の携帯電話のディスプレイは
押し合うように送られてくるクラスメート達からの
新年の挨拶メールの受信を知らせていた

「ったく、冴原のやつったら…」
男らしからぬゴテゴテのデコレーションで装飾された
『今年もダークのスクープは俺が頂くぜ!!』
という気の知れた友人の聞き慣れた文面に
思わず吹き出してしまう





RRR…


全てのメールを確認し
携帯を閉じたのとほぼ同じタイミングで
着信を告げる音楽が
部屋中に響きわたった

ディスプレイに表示されたのは

「日渡くん?!」

彼の「親友」


「はい!もしもし」
「丹羽か…?」
「そうだよ!あ、日渡くん
あけましておめでとう」
「ああ…おめでとう…」
ところで今君の家の前にいるんだけど、出てこれないか?」
「えっ!?」


全く予想していなかった言葉に、思わず大声を出してしまい、
慌ててベッドでぐっすり眠るウィズに目を向けたが
大助の動揺に気付くことなく
すやすや寝息をたてている
「わかった。今窓から出るから待ってて」
「ああ」

携帯をたたみポケットにしまい、厚めのダウンを羽織ると大助は勢いよく窓に手をかけた

























「おまたせ…っ??」
「おはようございます。丹羽大助」
目の前に居たのは怜ではなく
「もう1人の彼」
だった

「クラッド…どうして…!」
決して相容れない、
いや相容れてはいけない目の前の相手に
大助は思わず後ずさる


「怜様ではなくてがっかりしましたか?」
「日渡くんは?!」
「大丈夫ですよ。手荒なことはしていません。少し眠って頂いてるだけです。用が済んだらすぐに身体はお返しします。」

そう言って一歩大助に近寄り、目線を大助と同じになるように少し身を屈めた。端整な顔付きだけに
いきなり近寄られると
大助でなくとも少しは身構えてしまう



「私があなたにお会いしたくて、怜様にお願いしたのです。」
「クラッドが僕に…?」

きょとんとする大助に、クラッドは、ふっと優しく微笑んだ


「一緒に初詣に行きましょう」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ