novel

□星空の下
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「原田…?」
「日渡君!」

振りかえるとそこに彼はいた。

今日は眼鏡かけてないのね。
あなたのその澄んだ蒼い瞳に見つめられると胸がドキドキしてしまう。


「こんなところで何してるんだ?…女性が1人で出歩いているような時間ではないと思うんだが…」
「そ…それは…」


あなたに正直に言えるわけないじゃない…。


「ダークを待っていたのか?」


ちがう…そうじゃなくて…本当はね…

彼は私の沈黙を無言の肯定だと捉えたらしい。


「ダークなら…もう逃げられてしまったよ」


ふっと夜空を見上げる彼。
普段は冷静沈着な鉄仮面の彼の横顔には
ちょっぴり悔しさが伺える。

そんな普段とは違う表情を見せる彼の隣で
私は正直なことを言えず
何故か火照っていく頬を隠すように
ずっと下を向いていた。



この人の前ではどうも…



「送って行くよ」
「え…?」


予想もしていなかった言葉に顔を上げると
そこには優しい彼の瞳。


「もう遅いから…」
「うん…ありがとう」















夜道を2人並んで歩く。
今日は新月であたりは真っ暗だった。
2人を照らすのは夜空に広がる無数の星。
私達の間に会話はほとんどない。
ただゆっくり歩いているだけ。
でも私にとっては幸せな時間。


「あ…」

ふと彼は足を止める。
私も足をとめ彼の視線の先を見つめた。



流れ星…



あ、そういえば今日は獅子座流星群が見られるってテレビで言ってたな…


「日渡君は、流れ星に何お願いするの…?」


2人の間に沈黙が流れる。そんな中でも夜空では流れ星達が行き交っている。


「僕は…永遠…かな」


消え入るような声でそう言うと、
彼の表情が少しだけ陰るのが分かった。
教室でふとした瞬間に見かける寂しそうな瞳と同じ…。


「原田は?」


空を見上げていた彼はいきなり私の方に視線を向けて来た。


「私は…」


彼がそれまで見ていたのと同じ場所を見るように、
今度は私が頭上に広がる夜空を見上げた。



私の願い…それはね…



「…秘密だよ!」


そう言って私は彼に向かって微笑んで見せた。
この気持ち
大切にしたいから、
今は内緒。
いつか、いつか、
こうやって流れ星の瞬く夜空の下で伝えられたらな…

「そうか…」


そう言って彼は微笑む。
その微笑みは酷く優しくて…


「そろそろ行こうか」
「うん…」


2人はまた並んでゆっくり歩きだす。
頭上には無数の輝く星たち。

彼らの輝きは蒼白で冷たい印象を与えるけれど、私の心には暖かさを与えてくれる。



まるであなたみたいね…?







まもなくして私の家の前についた。
会話なんて数えるくらいしかしなかった。
それでもいいの。
あなたの側にいれたから…


「送ってくれてありがとう、日渡君」
「ああ…じゃあまた明日」

そう言って彼は私に背を向けて2人で歩いてきた道を引き返し始めた。















「日渡君!!」


私は大声で彼を呼び止める。


これだけはあなたに伝えとかなきゃ…


ゆっくりと彼は振り返り、不思議そうに私を見つめている。


「今日私が待ってたのはね…ダークさんじゃないの。」













「あなたなの…」












あなたに会うためにお化粧して可愛いかっこして。
夜、家族の目を盗んで家を飛び出して…

あなたと一緒に見れた流星群…
あれは神様からそんな私へのプレゼントだったのかな?





私の願い事…

-ずっと日渡君の側にいられますように…-











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