†MAIN†
□sugar<honey
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―ガチャッ
何の前触れもなく開くドアの音に驚き振りかえると、目に映るのは赤いバンダナ。
「……邪魔するぞ」
「…バ、バレットさんっ?」
えーと、その……とボクが突然の訪問に戸惑いあたふたとしているうちに、バレットさんはスタスタとまるで我が家同然に部屋の中に入ってきた。
いや、別にそう思ってくれてもいいんですけどね。寧ろ嬉しいし……じゃなくて、
どうしたんですかと口を開こうとしたが、それはバレットさんの呟きによって空気を吸い込むだけに終わった。
「…外は寒いな」
そう言うバレットさんの頬は心なしか赤く色付いていて、かじかんでいるのか、両手に息を吹き掛けてる姿が小動物みたいで、その……すっごくかわいい……。
ぼーっとそんなバレットさんの姿を目に焼き付け…いや、眺めていると、視線に気付いたのか訝しげに睨み付けてきた。
「なんだ?」
「え、えーと、とっ、とにかくホットミルク入れてきますね!」
背中に刺さる熱い視線をスルーしつつ、
あっ、見られるのはすっごく嬉しいんですけどね
ホットミルクを作り、持っていくと、バレットさんはどこかそわそわと、時々手に持っている小さな箱をじーっと睨み付けていた。
「あの……バレットさん?ホットミルク出来ましたよ」
「……っあ、あぁ」
「?…あっ、とにかく、これどうぞ」
まだ湯気のたつマグカップを手渡すと、ありがとう。と一言。
しかし、バレットさんは中々口を付けようとしない。
「えっと…バレットさんて、熱いの苦手でしたっけ?」
まぁ、それはそれで美味しい気もするけど……
「…いや、別に大丈夫だ」
えっと、じゃあ……
「あ、お砂糖入れるの忘れてましたねっ」
スプーン一杯分の甘い香りが白い水蒸気と共に部屋に広がった。
「………」
「……あはは」
バレットさんの眉間に皺が寄ったのはこの際気にしないでおこう。
「えーっと、それでどうしたんですか?」
何も言いだそうとしないバレットさんに、思い切ってそう尋ねてみた。
「………用が無きゃ来ちゃいけねーのかよ」
「あっいや、そんなことないですよっ!寧ろ嬉しいですし…」
えっと……これはまさかのデレ……ですかっ?
いや、嬉しい…嬉しいですけど…。
…でも、落ちついて考えれば、バレットさんが用事もないのに来てくれる訳もないし……
と、とにかく話してくれるまで待つ…しかないですよね。
「…そ、そういえば、今日は冬の感謝祭ですね」
とにかく会話を続けなければ、と適当に話題をふってみる。
たまたま、目についたカレンダーの日付。今年は忙しくて皆さんに挨拶出来なかったな……
そんなことを思っていると、突然目の前に突き出された、青い小さな箱。
「えっと…?」
視線をバレットさんに戻すと、顔を真っ赤に染めて、うつむきがちにこちらを睨み付けているバレットさんと目が合った。
いや、ちょっと待ってください。
そんな顔されてると色々と……
って、何ですかこの箱。
「あの…これは……?」
「……っ今日は冬の感謝祭だろ…!」
そっぽを向き、そう聞こえるか聞こえないかの声で呟くバレットさんの言葉に、手の中に納まる青い箱へと視線を移す。
……えっと、ということは、これはバレットさんからボクへの……
「…っありがとうございます!あの、すごく嬉しいです!」
感極まり、少々オーバーリアクションで、そう伝えると、
未だ耳まで赤くなりなっているバレットさんから、あぁ。という返事が返ってきた。
「…これ、開けてもいいですか?」
「……っ勝手にしろ」
それじゃあ、お言葉に甘えて、
包みが破れない様に慎重に包装紙を開いていくと、中から現れたのは、センスの良いペアカップ。
赤と青って……
これは期待しても良いってことですよね…?
「…本当にありがとうごさいます!このマグカップもとても気に入りました。」
「……ふん」
照れているのを誤魔化す様に冷めたホットミルクに口をつけるバレットさんに、少し悪戯心がうずいた。
「…バレットさん」
「なんっ……!」
部屋に響く軽快なリップ音。
「…甘いですね」
そう呟くとバレットさんはますます赤く色付いた。
fin.