僕記憶

□雪だるまが崩れていく際に -咲いてゆく華-
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辺り一面白に染まる雪景色。

ピキピキと軋む氷点下の地面。


「後もう少しで植えられるかな?」

白い息とともに呟いた僕。

目線は真っ白で固い地面に留まる。


「きっと今年は出来るわ。」

いきなり後ろから声がした。

振り向くとそこにはウクライナ姉さんがにこりと微笑んでいた。

「姉さん。」


「そうです、兄さんが望むならきっと。」

そして姉さんの陰から妹のナターリアがひょこっと出てきた。

「ナターリア。」


すると姉さんはそっと僕が持っていたものを掴んだ。

「あ…」

「でもこうしなきゃ咲くものも咲かないわよ?」


僕の持っていたヒマワリから種を採って言った。


枯れ果てたヒマワリから。


そして花びらだけが残ったヒマワリは灰色の雪空高く舞い上がっていった。


「はい。いい花を咲かせてちょうだいね。」

「うん!」

姉さんは手に積もった種を僕の手へ乗せてくれた。


一瞬霰のように輝いてみえた。


「雪が溶けたら、一緒に埋めに行きましょう。」

「うんっ!」


ナターリアは腕に手をまわしてきた。

姉さんは隣に寄ってきた。

とても暖かかった。

極寒なんて忘れられた。

絶対みんなで植えにこよう。


絶対に。


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