さん

□その手を離す勇気
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【その手を離す勇気】


固く固く握った
君の手の平が
予想外に酷く
温かかったから
思わず君を思いきり
抱き絞めて
しまったんだよ

君が其れを
絶対に望まないと
分かっていたのに
それでも必死に
その温かさを
欲してしまったんだ

じわりと染みる
君の少し高い体温は
とても心地良かった

君の地肌に触れて
トクンと規則的に
聴こえる心音に
ソッと安堵したんだ

君の命の鼓動すら
僕はそれはもう
愛しくて堪らないのに

甘い甘い時間の中
時なんて止まれば
良いなんて勝手に
想像してたんだ
君が時折みせる
苦痛の表情(かお)に
気付かなかったから

君は一人っきりで
泣いてたんだね
苦しかったんだね

…ごめんね

"スキ"だなんて勝手に
押し付けちゃってさ

でもねその手を
手放す勇気が僕には
まだ存在しなくて
静かに静かに
泣き続けてる君を
傷付けるしか出来ない
僕をどうか許して

願わくはいつか
君が笑顔で笑って
くれたら良い
泣かないで
いてくれたら良い


(僕に手放す勇気をどうか)


.

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