短編

□冬の日の出会い 一
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その男の子と初めて会ったのは、雪が降る冬の日だった。
何でも、梗さんが、雪の中で行き倒れていたその子を拾ってきたとのこと。

その子は額と両手足に包帯を巻いていたから怪我でもしているのかと思ったけど、どうも違うみたい。体中傷だらけなのは確かだけど。
伸びるがままに伸ばした髪に顔の半分以上を隠し、全てを写すことを拒絶した目をしていた。
…少なくともあたし以上につらい人生を歩んできたというのはあたしにも簡単に想像がついた。


★★★


「ねえ」
「…?」
「ご飯、一緒に食べない?」
「……」

ぷい、とその子はそっぽを向いた。

「食べないの?」
「……」
「…じゃあここに貴方の分のご飯置いておくから、ちゃんと食べるんだよ!」
「……」

ちら、とこちらを見たかと思うと、またそっぽを向いた。
ここに来て、目を覚まして起きられるようになってからずっとこんな調子だった。

体中にあったはずの傷はいつの間にか綺麗に治っていた。跡すら残っていない。
額と両手足に巻いた包帯は外そうとしない。見兼ねて新しいのに替えてあげようとしたら、替えようとのばした手を叩かれ、思いっ切り睨まれた。
つまりは拒絶された。

何か嫌がることをしたんだろうか。
きっとあたしにとってどうでもないことでも、あの子にしてみれば重要なことだったのかもしれない。

…やっぱりあたし、あの子が嫌がることしたんだ。


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