短編

□冬の日の出会い 二
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…ずっと独りだった。

自分の家族は、あの日奪われてしまったから。二度と会えなくなってしまったから。
それからずっとおれは独りだった。

幸せそうにしている余所の家族の姿を見ると、とても羨ましくて。
とても憎らしくて、恨めしくて。
そう思ってしまう自分が凄く嫌だった。

だから、そんな思いを抱かないように。

全てから目を背けた。全てから耳を塞いだ。
幸せに暮らす家族を見ないように。
幸せに過ごす声が聞こえないように。

憎らしく、恨めしく、羨ましく思うと。
自分がその幸せを壊してしまうのではないかと怖かった。


★★★


…目が覚めると、そこは知らない天井が広がっていた。
おれ…どうしたんだっけ。
売られてこき使われていた屋敷を飛び出して、やっと逃げ切れたと思ってそれで…意識がそこで飛んで。
…倒れたんだ。

「あ、起きたよ」

女の子の声がした。
その女の子の声だけじゃない。他にも色んな人の声がした。
起き上がろうとしたけど、体に力が入らない。

「あ、無理して起きなくていいよ。貴方凄く疲れてるみたいだから。しばらく休みなよ」

その言葉に従って、おれは眠りについた。


★★★


どうやら、この人達は道で倒れていたおれを拾ってくれたらしい。
優しくして貰えるのはありがたいことなのだけれど。優しく声をかけて貰えるのはありがたいことなのだけれど。

怖かった。

おれがこの人達を不幸にしてしまうんじゃないかって。そんな気がして。
だから、その優しさを素直に受け取ることが出来なくて。
口をきくのを拒んだ。

なのに。
どうして君はおれに関わろうとするの?
どうして皆おれに話し掛けてくるの?


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