☆夢の入口☆

□想い人
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私は今気になっている人がいます。

名前は長谷川 正さん。
  
私がアルバイトしている喫茶店に良く来て頂いている 云わば常連さんで、見た目は金髪だし近寄り難いなって思ってたんだけど、話してみたら凄く穏やかな人で、私はすぐに好きになってしまったのです。


外は晴天。今日も気持ちの良い青空が広がっている。

カラン♪と入り口の扉に付いている鐘が不器用な音を立てた。





「いらっしゃいませー あ、正さんっ!今日は随分早い時間ですね!?」  
 




時刻は午前10時を少し過ぎたところだった。

正さんが来るのは夕方が多いので、私は驚きながらも正さんの席にいつものブレンドコーヒーを持っていく。
 




「うーん、徹夜明けなんだ。今レコーディング中でさー」

「大丈夫なんですか?早く帰って寝た方がいいんじゃ、、」
 
「ふふっ、お気遣いありがと。でも此処のコーヒーを飲んでなまえちゃんに会わないと元気が出ないんだよねぇ、、」 
 
「なっ!なに言ってるんですかっ!?もぉ、、」
 




正さんは有名なバンドマンなのでいつも忙しそう。今日も随分お疲れのようだし・・・

そんな中冗談でも『会わないと元気が出ない』なんて言われたら、もうねぇ・・・
私の口元は緩みっぱなしですよぉ!!





「そう言えば、正さんのバンドのCD聴きましたよ?」
 
「マジで!?」
  
「ふふふっ、マジです!」
 
「格好良かったでしょ?」 

「・・・・・・・・・・。」

「なまえちゃん?」


「・・・凄くかっこよかった、です、、」
  




不安そうな眼差しの後、正さんの表情はパッと明るくなり『でしょ?』と白い歯を見せて微笑んだ。

そんな正さんの笑顔にドキリとする。
 
CDを聞いた瞬間、ベースの音に引き込まれた。同時に悔しさも生まれた。本当に正さんはアーティストなんだって思うと、私と正さんの距離は物凄く遠いものなんだと思い知らされてしまう。

気が付いたら私の頬に涙が伝って落ちていく。

正さんに迷惑をかけてしまうから必死で抑えているのに、こういう時に限って涙は私に逆らってどんどん流れてくる。

すると突然私の身体はふわりと優しい暖かさと、正さんがいつも吸っている煙草の香りに包まれた。




 
「俺がどうして頻繁に此処に来てるか知ってる?」





私は正さんの胸の中で静かに首を振る。





「なまえちゃんに会いたいから」

「わたしも、です・・・」

「え?それ本当?」

「はい。私、正さんのことがすっ!!!」





正さんの手が伸びてきて口を塞がれた。




  
「待って!その先は俺が言うから!俺さ、こんな生活じゃん?ツアーで暫く会えない時だってあるし、オフでも曲を作ったりしなくちゃならない。でも俺は此処に来てなまえちゃんと話すだけで気持ちが和むっていうか・・・また頑張ろうって思えるんだ」


「俺はなまえちゃんが好き」


「私も・・・初めて会った時からずっと正さんのことが好きでした、、」





正さんは私を更に強く抱き締めた。
それに答えるように私も正さんの背中に腕を回す。

夢のようで信じられないけれど、小さく見上げると私の大好きな正さん。

目が合うと二人、照れたように微笑んだ。


外は相変わらず雲ひとつない晴天。

 


















想い人










「いらっしゃいませー あっ!正お帰りなさい♪」

「なまえただいまー、もうすぐ仕事終わるでしょ?」

「うん!」

「一緒に帰ろ?それでさ・・・」





あついあついコーヒーを今日もどうぞ召し上がれ?










(な、なに言ってるんですかっ!!)

(んー、なまえ不足・・・)










END

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