☆夢の入口☆

□真夜中の孤独
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ずっとずっと、傍にいて?
ずっとずっとずっと、あなたの隣にいたいの。










クロが小さな声で鳴いた。
喉元を撫でると気持ち良さそうに目を閉じる。





「きみのご主人さまは今日も遅いね・・・」





窓の外は深い暗闇と静寂に包まれている。
今日は早く帰るからと言っていたのに、あと数時間もすれば朝の光が顔を出すだろう。


寂しい、会いたい・・・寂しい。

でもそんなことを言ってしまったら彼はもっと悲しい顔をすると思う。
だから彼の前では強がりばかり。
弱音を吐いたら大好きな人を困らせてしまうもの。

だから今日も気付かれないようにひとりで泣くの・・・





「りゅう・・・りゅうたろぉ、、りゅうたろっ・・・」





泣きながら彼の名前を何度も何度も呼んだ。

クロが心配そうに私を見つめる。

静寂の中、私の力無い声が響いた。





「ぐすっ、、りゅうたろ・・・う・・・」


「なまえ?」





はっと我に返る。
見上げると少し驚いた顔の竜太朗がリビングのドアの前に立っていた。





「なまえ・・・何で泣いて・・・」

「あ、ううん。大丈夫、何でもないよ」





私は慌ててパジャマの裾で涙を拭う。
暗い視界の中、外気と竜太朗の匂いに包まれた。





「遅くなってごめん・・・まさかいつも泣いてたの?」





竜太朗の優しい声。

今まで涙なんか見せたことがなかったのに、一回緩んでしまった涙腺はそう簡単に止まってはくれない。

私は必死で『大丈夫』て言ったけど、竜太朗はどんどん悲しい表情になっていく。





「なまえ、俺の前では素直になってよ・・・」

「りゅうたろ、、」

「いつもいつも待たせてばかりでごめん」





そう言って彼は更に強く抱き締めた。
竜太朗の律動的な心臓の音が心地好く響いていて安心する。

ゆっくりと目を開けると心配そうな竜太朗の黒くて綺麗な瞳に吸い込まれる。


額に、目蓋に、鼻に・・・優しくて、あったかい唇が落ちてきた。





「これからも待たせてばかりかもしれないけど、もうひとりで泣いたりしないで・・・?」

「うん・・・」

「寂しい時はちゃんと言って?もっと俺に我が儘を言ってよ?」

「うん・・・」

「なまえ?」

「・・・ん?」


「キス、しよう?」





あぁ、私は何て単純なのだろう。
さっきまでの寂しさが何処かに消えてしまった。
けれど、もっと彼を感じていたくて、何度も何度も名前を呼んで、何度も何度も口付けをした。


もう力の無い、涙声なんかではなく・・・




















真夜中の孤独










(なまえの声に欲情した・・・)

(んっ、竜太朗?)

(愛してる・・・)










END

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