居眠り王子と夏の駆け引き
□居眠り王子と夏の駆け引き
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そもそもが可笑しな話だと思う。
夏休みに入ってから毎日のように塾に通う私が部屋に帰ってくると、絶対に奴がいる。
――純平。
私と奴は、いわゆる幼なじみ。
16年間を共に生きてきた。
たかが家が隣だっただけで、小中と一緒になって高校は一緒にならないだろうと思っていたら、高校まで一緒だった。
それは、まぁ…良しとして。
どうして純平は毎日、私のベッドで寝ているのだろうか?
私が暑いなか頑張って自転車を漕いで、またまた頑張って苦手を克服するために塾に通ってるなか、何故純平はのうのうとしていられるのかと、苛つきが増す。
もの凄く文句を言ってやりたい。
だけど言えない、矛盾した私の気持ち。
実は私、純平に密かに恋心を抱いていた。
ドサッと鞄を床に放り投げ、うつ伏せでスヤスヤ寝息をたてる純平の傍に座る。
ブラウンのサラサラな髪が、ほんの少し瞼に覆い被さっていた。
寝息をたてる微かに開いている唇に、吸い込まれるように視線が集中する。